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「今回報道されたネトフリのリストラや株価の下落は、世界全体、特にアメリカ市場や投資家の目線を反映したものだと思います」

 

こう語るのは、テレビ業界ジャーナリストの長谷川朋子さんだ。

 

米動画配信大手のNetflix(以下、ネトフリ)が、10月14日時点で全従業員の6%にあたる約1000人の人員削減に踏み切るとロイター通信などが報じ、波紋を広げている。同社株は10月14日時点で年初来で約25%下落しており、2022年以来の大規模なリストラになるという。

 

日本におけるネトフリといえば、大谷翔平選手(32)らが出場したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の放映権を獲得し、地上波中継なしの独占生配信を敢行して世間を驚かせたばかりだ。潤沢な資金力を誇る「配信の絶対王者」に、一体何が起きているのか――。

 

長谷川さんは、日本国内と世界市場における受け止め方のギャップをこう指摘する。

 

「じつは日本市場に関しては、いまも投資を積極的に続けている段階なんです。2024年も『地面師たち』(豊川悦司・64、綾野剛・44など出演)が大ヒットしましたし、新作シリーズ『ガス人間』(小栗旬・43、蒼井優・41など出演)や、戸田恵梨香(38)主演の『地獄に堕ちるわよ』、松岡茉優(31)主演の『ダウンタイム』、さらにリアリティショーの『ラヴ上等』など、おおがかりな制作や話題を残した作品が目白押しで、決して日本でのペースを落としているわけではありません」

 

国内では順調に見える事業展開だが、グローバル市場に目を向けると、投資家たちの見方は大きく異なっているという。長谷川さんはこう続ける。

 

「数年先を見据える投資家たちの目線は非常にシビアです。5年前のイケイケだった時期と比べると、現在はスマホ向けの『縦型ドラマ』が世界中で台頭しはじめ、アメリカ、中国を中心に『AI制作』のスタジオが次々と生まれています。

 

さらに、世界ではテレビ局との企業提携を強めるYouTubeの爆発的な拡大もあり、動画配信の絶対王者だったネトフリの『先読みの伸びしろ』に疑問符がつき始めている。だからこそ、これまでのような巨額を投じる実写ドラマの大型制作路線に対して、少し慎重な見方をされているのだと思います」

 

従来の成長エンジンだった「巨額の制作費を投じたオリジナル映画・ドラマ」の連発戦略は、転換点を迎えているようなのだ。日本国内の配信ラインナップにも、その兆候はすでに現れている。

 

「日本でも実感されている方が多いと思いますが、最近は既存の地上波テレビ局が作ったドラマが、ネトフリで同時配信されるケースが増えていますよね。たとえば、カンテレ・フジテレビ系で現在放送中の芦田愛菜(22)さん主演ドラマ『南田南弁護士は天才肌』や、過去の名作の買い付けなどが目立ちます」

 

コスト管理のシビアさは、作品の調達手法に明確に反映されている。長谷川さんは制作現場の実情を明かす。

 

「ネトフリがイチから出資して作るオリジナルではなく『買い付け』作品は、制作コストがかかりません。オリジナル作品の数をやや減らし、こうした買い付け作品を増やすことで、コストの削減と効率化を図っているのだと思われます」

 

ロイター報道では、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの配信・スタジオ資産の買収断念が経営戦略の懸念材料として挙げられていた。だが、長谷川さんはこの見立てに慎重な見方を示す。

 

「ワーナーの買収中止は見方によると思います。スカイダンスによる執拗な買収提案で値段が吊り上がってしまったため、ネトフリは『そこまでの価値はない』と手を引いたと考えられています。つまり、負債を抱えるリスクを回避したという意味で、買収しなくて正解だったと見る投資家もいるようです。

 

ただ、それに代わる『第2の新しい収益源』がいまだ明確に見えていないという点で、投資家を不安にさせているのかもしれません」

 

同業他社との競争環境においても、ネトフリ特有の構造的な弱点が浮き彫りになりつつある。世界首位の座を維持しながらも、追随する競合企業とは「ビジネスモデルが異なります」と長谷川さん。

 

「世界で一番見られている配信プラットフォームは依然としてネトフリですが、後を追う他社には決定的な違いがあります。

 

たとえばAmazonは、言わずと知れたECサイトの世界的大手ですから、映像配信だけの業態ではありません。プライム会員の特典として映像を提供している側面が強く、全体の資産規模や収益構造が別格です」

 

さらに長谷川氏は、エンタメ界の巨人であるディズニーの強みと比較しながら解説する。

 

「ディズニーにしても、買収戦略に長けているだけでなく、テーマパーク経営があり、何世代にもわたって世界中で稼ぎ続ける『ミッキーマウス』という最強のIP(知的財産)を持っています」

 

巨大な競合2社に対し、ネトフリは映像配信ビジネスに特化して成長を遂げてきた。その成功体験こそが、現在では足かせになりかねない。

 

「ネトフリは、これまで『世界同時配信』や『全話一挙配信』という画期的なシステムで視聴習慣を変革し、この10年でハリウッドの伝統的な映画スタジオをしのぐ存在にまで急成長してきました。

 

しかし、映像配信一本のビジネスモデルである以上、この画期的な成功の『次の一手』が見えないと厳しく評価されてしまう。いまはまさに、その戦略の先が見えなくなっている過渡期と言えるかもしれません」

 

業界全体で「サブスクの頭打ち」が現実味を帯びてきていると長谷川さんはみる。各社は打開策として広告付きプランの導入を進めるが……。

 

「現実的なビジネスモデルとして、各社はすでに『広告付きの低価格プラン』を導入して新しい収入源にしています。ただ、これは昔からテレビ局がやってきた仕組みの焼き直しに過ぎません。

 

今後、制作費をスポンサーだけに頼るケースもあるのかもしれませんが、その場合、表現の制限というデメリットもあります。

 

無料のYouTube視聴が視聴者の生活に根付きつつある今日において、単一のサブスクモデルだけで勝ち続けるのは不可能に近くなっているのかもしれません。これからは『広告』『サブスク』、そして『ファンビジネス』など、多角的に手を広げていく必要があります」

 

定額制の枠を超え、今後のメディア勢力図を塗り替える鍵として長谷川さんが挙げるのが、個人の影響力を収益に繋げる「ファンモデル」の爆発力だ。

 

「いま海外で注目されているのが、アメリカの『ダーマン(Dhar Mann)』というユーチューバーの事例です。彼は自宅で1人で動画制作を始めましたが、いまや200人のスタッフを抱えるスタジオを築き、テレビ局と提携してコンテンツを制作するまでの存在になりました」

 

個人の熱狂的な支持を収益につなげる手法は、日本の市場環境とも強く共鳴している。

 

「日本でいうHIKAKINさんのように、システムではなく『その人物(推し)が好きだから見る』というファンモデルの力は凄まじいものがあります。ネトフリのようなプラットフォームが、こうしたインフルエンサーを巻き込んでコンテンツを作っていく動きはさらに加速するでしょう」

 

制作現場を揺るがす「AI技術の台頭」についても、テクノロジーの導入そのものが最終的な勝敗を決めるわけではないと長谷川さんは強調する。

 

「もう一つの大きな革命は、やはり『AI制作』です。AIを使いこなせば制作費は激減し、これまでにないスピードでの映像表現や効率化が可能になります。

 

ただし、AIのテクノロジー競争の先に何があるかといえば、最後はやはり『人(マンパワー)』なんですね。誰が面白いアイデアを出し、誰がディレクションするのか。これまでは裏方だったような才能ある人材を、AIという武器を使ってどう発掘し、どう輝かせるかです」

巨額投資によるコンテンツの独占配信から、新たなメディアの生態系へ。生き残りをかけた競争の原点は、常に視聴者の心を惹きつける「唯一無二の存在」にある。

 

長谷川さんは最後にこう結んだ。

 

「ネトフリは今春、WBCの放映権に莫大な投資をして『大谷翔平』という圧倒的な存在でファンを惹きつけました。

 

これからのメディアの勝負は技術の力もさることながら、AIをツールとして使いこなしながら『次の大谷翔平』となるような、人の心を動かす強力な人材やコンテンツを見つけ出せるかどうかにかかっていると思います」

画像ページ >【写真あり】2026年上半期に好評だったネトフリのラインナップ(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

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