《怒りがおさまらない。人間の殺しに利用するため犬の遺伝子まで変えて命を弄ぶ。ここまで人間性を失くせるのか》
故・坂本龍一さん(享年71)の娘で歌手の坂本美雨さん(46)が10月26日、Xに投稿した怒りの言葉だ。
発端は、米新興企業「ワーハウンド」が発表した、クローン技術や遺伝子編集を用いた軍用犬の開発計画。爆発物の探知や警戒などを担う犬の能力を高め、軍や警察などに供給するという。
坂本さんは、同社の設立に関わったパルマー・ラッキー氏(34)と、小泉進次郎防衛相(45)が握手する写真を投稿し、反対の声を上げるよう訴えた。
ラッキー氏は、米軍事技術企業「アンドゥリル・インダストリーズ」(以下、アンドゥリル)の共同創業者でもある。
小泉氏は昨年12月4日、来日したラッキー氏と面会。
《このご縁を大切に、日本の防衛産業の発展と日米で新たなサプライチェーンの構築に繋げていきたいと思います》
とXに投稿している。
小泉氏が軍用犬開発に関与している事実は確認されていない。しかし、アンドゥリルと日本との間には、もう一つ注目すべき動きがある。
■「小泉大臣が後押しする形になっていると考えられる」と専門家
「今年6月、アンドゥリルが日産自動車の追浜工場(神奈川県横須賀市)の取得に向けて日産側と協議していると報じられました。軍事用ドローンなどの生産拠点にする構想です」
そう話すのは、防衛ジャーナリストの半田滋さん。
日産は2025年7月、経営再建の一環として、追浜工場での車両生産を2027年度末に終了すると発表。研究施設や専用ふ頭などは引き続き使用する方針だという。
半田さんは、アンドゥリルについてこう解説する。
「アンドゥリルはここ数年で急成長しています。AIを活用した国境監視システムなどを手がけ、現在は自律型ドローンや無人潜水艦の開発にも力を入れています」
半田さんによれば、同社の売上高は2024年の約10億ドルから、2025年には約22億ドルへと倍増しているという。
「従来の軍需企業は、国からの発注を受けて兵器を製造してきました。一方、アンドゥリルは自ら兵器を企画・開発し、軍に提案するという手法を取っているんです。米国では自動車工場だった施設を無人潜水艦の製造に活用しています。追浜工場の設備も利用できるのであれば、大きな利点になるでしょう」
追浜工場がある横須賀市は、小泉氏の地元選挙区でもある。
「昨年12月には、小泉防衛相がラッキー氏と面会し、アンドゥリルの技術に期待を示しています。事実上、防衛大臣が後押しする形になっていると考えられます」(半田さん、以下同)
ただし、小泉氏が追浜工場の取得交渉に直接関与した事実は確認されていない。また、6月25日付のロイター通信によれば、日産は追浜工場の売却先について、まだ決定していないと説明している。
■「軍事から平和へ」の土地が再び軍需工場に? AI兵器への懸念も
半田さんが特に注目するのは、追浜工場の歴史だ。
「もともと追浜工場の敷地には、旧日本海軍の航空技術廠があり、軍用機などの研究開発が行われていました。戦後、そこが日産の自動車工場になったんです。つまり、軍事から平和産業へと転換した土地なんです」
1950年制定の「旧軍港市転換法」は、横須賀などの旧軍港都市を平和産業港湾都市に転換することを目的としている。
「ところが今、再び軍需工場になる可能性が出てきたわけです。地元では不安の声が広がっており、日産に対して『軍事産業には売らないでほしい』と手紙を送っている人たちもいます」
一方で、工場閉鎖に伴う雇用問題もある。
「地元には、日産に代わる企業に進出してほしいという期待もあります。しかし、どのような企業を受け入れるのか、住民自身が選べるわけではないんです」
もしアンドゥリルの取得が実現すれば、どんな兵器が作られるのか。
「まず考えられるのは、自衛隊向けのドローンや無人潜水艦などの製造です。日本で製造した兵器を海外へ輸出する可能性もあります。追浜には積み出し港もあり、立地条件としては魅力的でしょう」
半田さんが特に懸念するのは、AIが自律的に行動する兵器の開発だ。
「アンドゥリルは、AIによってドローンや無人潜水艦を自律的に動かす技術をすでに実用化しています。通信が途絶えても、人間が逐一操作することなく任務を続けられる。問題は、こうした自律性が、人間を攻撃するかどうかの判断にまで及ぶことです」
そして、こう問いかける。
「機械に人を殺させていいのか。しかも、機械が判断して人を殺していいのか。そこが大きな問題です」
軍用犬への遺伝子技術の利用をめぐって浮かび上がった、急成長する米軍需企業と日本との接点。
かつて軍用機を開発し、戦後は自動車を生産してきた追浜の土地が、今度はAI兵器を生み出す場所になるのだろうか。
画像ページ >【写真あり】「怒りがおさまらない」。Xで怒りをあらわにした坂本美雨さん(他1枚)
