明治時代から約150年続く歴史に幕が下りることにーー。
横浜市は9月15日、鶴見区にある生見尾踏切を12月7日で廃止すると発表。これに伴い、10月21日から27日にかけて同踏切のそばでパネル展示やチラシの配布を行い、地域住民への周知を図った。
生見尾踏切は、ピーク時には1時間のうちわずか16分しか遮断機が上がらない“開かずの踏切”として知られ、渡りきるには計6本の線路をまたぐ必要があり、全長約45メートルに及ぶ踏切内には中洲のような待避スペースが存在する。
同踏切では、’13年以降に人身事故が5件発生している。こうした事態を受けて、11月に既存の跨線人道橋の中央階段部へのスロープ設置が完了したことに伴い、踏切の廃止が決定していた。
地元の人たちの思いとはーー。本誌は現地へ向かった。
ラッシュ時には10分から20分ほど遮断機が下りたままになるため、ひとたび開けば、待ちわびた歩行者や自転車が堰を切ったように押し寄せる。
踏切には監視員が2名常駐しており、「列車が接近しています、早く渡って」「前が詰まっているので進入しないでください」と、雑踏の中で声を張り上げていた。
踏切を見守り続けてきた監視員に話を聞くことができた。
「‘13年の人身事故を契機に、この踏切には監視員が配置されるようになりました。ご高齢の方の歩行やベビーカーの通行には危険が伴うため、警報が鳴った際には監視員が横断を制止したり、速やかな通行を促したりしています。
以前は午後6時までの配置でしたが、24年に相次いだ死亡事故を受け、現在は午後11時まで交代制で配置されています。これほど危険な状況ですから、踏切が廃止されるのもやむを得ません。
今後、歩行者は駅に続く跨線人道橋を利用でき、いずれ新たな跨線人道橋も新設される予定です。車については1.6キロほど迂回するしかありませんね」
長年利用してきた生活動線が絶たれることに戸惑う声も少なくない。たばこ店を営む商店街の役員はこう嘆く。
「廃止か存続か、長いこと横浜市と話し合ってきました。地元としては存続を望んでいて、多いときは3万人もの署名を集めて提出したんです。せめて廃止するにしても、`33年度の完成が予定されている新たな跨線人道橋が設置されてからと、およそ決まっていたはずでした。
ところが先月になって突然、“12月で踏切を廃止する”と知らされました。事故が相次いだため、行政も急遽予定を早めたのでしょう。
すでに議会で決まったことですから、今さら覆すことはできません。ただ、当店には線路の向こう側からたばこを買いに来てくださるお客様もいらっしゃいます。踏切がなくなり、わざわざ階段を上り下りしなければならないとなれば、客足が遠のいてしまうのは避けられないでしょう」
踏切を行き交う人々に話を向けると、ある主婦は「向こう側まで買い物に行った帰り」だといい、年配の男性は「昼食にそばを食べに行くところ」だと語った。常に危険と隣り合わせの場所でありながらも、生見尾踏切が人々の生活動線としていかに深く根付いているかが窺える。
姿を消すその日まで、地元住民たちの複雑な思いを乗せて警報機は鳴り続けているーー。
画像ページ >【写真あり】横断に危険が伴う“開かずの踏切”を渡る老人(他1枚)
