ショート動画の流行により、クリエイター達が日々新たな撮影手法を生み出しているなか、ある手法が物議を醸している。
発端となったのは、韓国発のデジタルファッションメディア「デイリー ファッション ニュース(Daily Fashion News)」が11月4日にインスタグラムに投稿した動画。
モデルとみられる女性がJR大久保駅のホームから、新宿行きのJR総武線の窓にスマートフォンをテープで貼り付ける。すると、画面はそのカメラからのものと思われるアングルに切り替わり、発車した電車と並走するように女性がホームを走り、車両の外側から捉えたような沿線の景色が音楽とともに流れる。そして最後は、電車が駅に到着した後、同じ人物がスマートフォンを回収するという構成だ。
ただし、走行中の映像が、本当に車体に貼り付けられたスマートフォンで撮影されたものかは確認できない。別の人物が車内などから撮影した映像を組み合わせている可能性もある。
それでも、動画では女性が発車する電車と並走するようにホームを走っており、撮影方法そのものにも危険が伴う。
実は、電車にスマートフォンを取り付けて撮影する行為が問題になったのは、今回が初めてではない。
「今年8月には東京メトロ日比谷線でも、車体にスマートフォンを貼り付けて撮影し、発車後にホームを並走する動画がSNSで拡散しました。東京メトロはメディアの取材に『本件撮影について許可した事実はない』と回答しています。さらに10月には、タイ・バンコクの高架鉄道BTSでも同様の撮影をめぐる動画が拡散し、批判を集めました。
撮影場所や映像のつながりに不自然な点があることから、実際にスマートフォンを車両の外側に貼り付けたまま走行させたのかについては疑問も残ります。ただ、国内外でこうした撮影手法が見られるようになっています。仮に走行中にスマートフォンが落下すれば、利用客だけでなく、線路の下を通行する人や車両などにも被害が及ぶおそれがあります。撮影者本人だけの問題ではなく、周囲の人を巻き込む事故につながりかねない行為です」(ITジャーナリスト)
そこで、今回の動画についてJR東日本に問い合わせたところ、担当者は「今回の動画は把握しております」と回答。駅構内などでの撮影をめぐる問題について、次のように説明した。
「駅のホームにおいて無断でほかのお客様を撮影し、周囲のお客様にご迷惑をかける行為等、当社としては施設内等での撮影において様々な事象が発生しているため、ホームページ等で注意喚起を行っています」
JR東日本は公式サイトでも「当社施設内等における録音・撮影マナーに関するお願い」を掲載。ほかの乗客や係員を無断で撮影する行為、ホーム柵やホームドアから乗り出して撮影する行為、点字ブロック上で立ち止まったり荷物を置いたりして撮影する行為、三脚や脚立を使った撮影などをやめるよう呼びかけている。また、安全確保のため、駅係員が撮影を制限したり、注意したりする場合もあるとしている。
さらに、車体に物を貼り付ける行為については「当社の安全面を脅かす行為に繋がりかねない」と懸念を示したうえで、今回のような撮影行為については「車両の窓の外側にカメラを貼り付けて撮影する行為は大変危険ですので、おやめください」と注意を呼びかけた。
なお、11月5日時点では閲覧できた問題の投稿は、翌6日16時に確認した際にはすでに削除されていた。
SNSで注目を集める映像を撮影したいという思いがあったとしても、列車の安全運行や周囲の人の安全を脅かす行為は許されない。鉄道会社が繰り返し注意を呼びかけていることを、改めて認識する必要がありそうだ。
画像ページ >【写真あり】総武線の窓ガラスに貼り付けられたスマートフォン(他1枚)
