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日が暮れるのがビックリするほど早くなりました。片岡愛之助でございます。

今、兵庫県豊岡市、出石なのですが、やはりもう冬が近いなという実感があります。

そしていよいよ、明日から「第八回永楽館歌舞伎」が開幕します。近畿地方に現存する唯一の明治期からの芝居小屋出石永楽館で行われる永楽館歌舞伎。年に一度、楽しみにしていてくださるお客様もたくさんおられます。本当にありがたいことです。

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去年の「永楽館歌舞伎」のときのお練りの様子です。
少々の雨なら決行です!(C)片岡愛之助

 

「永楽館歌舞伎」のいちばんの醍醐味というのは、やはりお客様との距離の近さです。宙乗りをさせていただいたときもものすごくお客様の反応がよくわかりますが、近ければ近いほど、喜んでいただけているのを実感できます。今年4月、名古屋・中日劇場で客席の真上を斜めに宙乗りさせていただいたおりには、お客様の頭上ギリギリまで低くしていただいた効果もあり、本当にみなさまの拍手喝采が身に染みました。

永楽館にお話を戻しますと、僕が経験したお客様との“最接近”距離記録です。

1階席が近いのは当然なのですが、2階席までの距離の近さは、恐らく永楽館がいちばんだと思います。

第二回公演で『弁天娘女男白浪』を上演したときのことです。稲瀬川勢揃いの場で、僕は弁天小僧菊之助を勤めておりました。5人はひとりひとり、花道から登場し、名乗りをします。弁天小僧は、いっとう最初に登場して、最後の5人目が名乗り終わるまで花道に立ち続けているわけです。つまり、ほかの5人のなかで誰よりも長く花道に立っている、ということになります。

大劇場ではありえませんが、永楽館では、花道で朴歯の高下駄を履いて見得を切り終え、ふと目をやるとなんと目の前が2階席のお客様。キリッとした顔で立ち続けていなければならないのに、目の前にお客様がいらっしゃるんでお互い照れくさくなって、どちらからともなく笑ってしまいました(笑)。こんなことあるんだなと、ビックリした覚えがあります。

歌舞伎座では広い舞台で悠々と演じられる立廻りも、コンパクトな永楽館ではひと工夫が必要です。長刀を歌舞伎座の勢いで回したら、お客様にバーンと当たってしまいます。いくら小道具の長刀とはいえ、当たればケガ人が出てしまいますから。それでも手加減しているふうには見せられません。

工夫に工夫を重ねてお見せしたあと、「ものすごい迫力やった」とお褒めの言葉を賜ったときは、役者冥利に尽きました。

今年は10日まで、『青雲の座 出石の桂小五郎』と『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』の2作品を上演致します。志賀直哉ら文豪の愛した城崎温泉も近くです。どうぞ永楽館歌舞伎にお運びください。

 

そして、11月5日放送のBS日テレ「片岡愛之助の解明! 歴史捜査」(木曜日21時~)は、「幕末・天下分け目の戦い! 鳥羽伏見の戦いの真実を追え!」をお送りします。

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12月は顔見世興行。京都の町を楽しみたいと思います。
「片岡愛之助の解明! 歴史捜査」(C)BS日テレ

 

今年12月は京都南座の顔見世興行に出させていただくのですが、身近な京都市内でこれほど大きな戦いがあったなんて、現在の京都の街を歩いていてもちょっと想像がつきません。薩長を中心とする討幕軍と幕府軍が命懸けで戦った、時代を変えた大きな戦さがこの京の都で行われたという事実に、改めて考えさせられました。

大政奉還を二条城で行った徳川慶喜は、無駄な殺し合いを避けるためにどんな計略をめぐらしたのか。鳥羽伏見の戦いに至るまでの、教科書には記されない当事者のやり取りには、とても興味深いものがあります。

その「歴史捜査」から僕の日めくり『片岡愛之助が贈る 歴史上の英雄!今日の名言~毎日を前向きに生きるメッセージ~!』が発売中です。
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歴史上の英雄の名言には、毎日を前向きに生きるヒントや元気の素がたくさん詰まっています。どうぞ毎日めくってお楽しみください。

では、風邪などお召しになりませぬよう。

片岡愛之助

プロフィール

1972年3月4日生まれ。’81年12月、十三世片岡仁左衛門の部屋子となり、南座『勧進帳』の太刀持で片岡千代丸を名乗り初舞台。’92年1月、片岡秀太郎の養子となり、大阪・中座『勧進帳』の駿河次郎ほかで六代目片岡愛之助を襲名。’07年12月上方舞・楳茂都流の四代目家元を継承し、三代目楳茂都扇性(せんしょう)を襲名した。

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