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みなさんは「世界一貧しい大統領と呼ばれた男」をご存じでしょうか。昨年、日本でもソーシャルネットワークを中心に話題になった男の名は、元ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカさんです。

ムヒカさんがウルグアイの大統領に就任したのは10年。そのとき彼が財産として申告したのは、’87年型フォルクスワーゲンという1台の中古車だけだったということが世界を驚かせました。それに彼は大統領の給料の中からわずか10%のみを受け取り、残りの90%はNGOや慈善団体などに寄付。また大統領に与えられる大統領府は、ホームレスの避難所として貸し出しました。

5歳の時に父を失い、貧しい子供時代を過ごしたムヒカさん。若いころは独裁政権との戦いに参加し、銃で撃たれ重傷を負い、13年間に及ぶ獄中生活も経験しました。そうした数々の苦難を乗り越えて大統領になった彼は清貧な精神を貫くとともに、人間にとって本当の幸せは何であるかを見極め「幸せの増進のためには、政府に、企業に、そして個人に、どういったアクションが求められるか」について全世界に発信し続けてきました。

ムヒカさんは大統領在任中に数々の有名な演説を行っています。まず’12年ブラジルで行われたリオサミットでは、消費社会に振り回される現代人を痛烈に批判しました。「我々は消費社会に統制されている」とし「我々は経済発展のために生まれてきたのではなく、幸せになるために、この地球に生まれてきた」と述べました。続いて「貧しい人はモノを少ししか所有していない人ではなく、自分の欲望に際限がなく、いくら所有しても満足することを知らない人」であるとし、根本的な問題は「我々が築いてきた社会モデルであって、反省の上で真剣に再考しなければならないのは、我々のライフスタイルである」と指摘しました。

その翌年の’13年に行われた国連総会の演説でも、彼は「現代社会は本質的な価値ではなく、ただお金を儲けることでしか幸せになることができないと思っている人たちによって、機能しているようである」とし「人類は市場経済をあたかも神のように信奉し、お金を稼ぐことができず、消費ができなくなると、自分自身をとるに足らない存在だと思ってしまう」と主張。我々が持つ最も大切な資産は、お金ではなく、日々の日常から見いだす「ささやかな幸せ」であるとしました。

こうした過剰な消費社会への批判に加え、ムヒカさんは地球環境の保護に関しても強いメッセージを送ってきました。「国境を超えて全世界が少数の資本家の利益だけのために機能する経済体制との戦いを準備しなければいけない」とした上で、「我々に本当に必要なのは財産を守るため奴隷のように長い時間を働くことではない。綺麗な水を確保するために取り組み、生活の中でのリサイクルを推進することで、地球温暖化の進行を止めるために力を注ぐべきである」と主張しました。

興味深いことに、ムヒカさんは日本についても触れています。「日本のような国は、経済的奇跡を成し遂げた。それは日本人がとても勤勉に働いたからである。しかし一生懸命働いて経済的に豊かになるということは、もしかしたら簡単なことなのかもしれない。本当に難しいことは一生懸命に働きながらも、ストレスに押しつぶされることなく幸せな日々を暮らすことである」としました。

みなさんは、日々の生活を楽しんでいますか。幸せを感じていますか。ムヒカさんが教えてくれるように、我々を幸せにするのは終わりのない物質的な欲求を満たすことではなく、大切な人たちとの何気ない日々の生活に心から感謝し、それを思いきり享受する時間ではないでしょうか。

 

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