先日、24歳の末期がんブロガーが結婚式前日に亡くなったという悲しいニュースがありました。末期がんを患っているアンナ・スワビーさんが結婚式を予定していたのは9月17日。しかし16日、Facebookに彼女の訃報が親族によって投稿されたのです。そこには「私たち全員が感じている悲しみは、言葉では言い表せません。でも悲しみのなかで、彼女が病気を通じて見せてくれた勇気、精神力、そして決断力を、とても誇りに思っています……私たちに生き方を教えてくれた人は、間違いなくアンナ・ルイーズ・スワビー。美しく勇敢な女性でした」とありました。
私は彼女に会ったことはありませんが、きっと自分の苦しみよりも自分の生の終わりよりも、自分の苦しみを見て辛い思いをしている大切な人を気にかけ、いつも温かい眼差しや優しい言葉をかける人だったのではないかと想像します。人によって成功の定義は色々あります。しかし人の心が本当に豊かになるのは自分がしてほしいことを他者にしてあげたり、自分がかけてほしい言葉を他者にかけてあげたりする瞬間です。そうした自分のことだけでいっぱいにならず、他人を思いやる心の姿勢が大切ではないかと思います。
心理学に「セルフイメージ」という用語があります。直訳すると“自分が自分をどう考えるか”ということになるのですが、実は我々が持っているセルフイメージのほとんどは自分で作り上げたものではありません。実際は子供のころ、親や先生など力のある他者にかけられた言葉によって作られているのです。彼らの言葉を受け入れざるをえなかった結果として自分の自分に対する意識が形成され、それがセルフイメージになっていく。要するに、他者からかけられた言葉が今の自分のセルフイメージを作っているのです。
なので、我々は人生のどこかで、セルフイメージが自分の理想と重なるよう再構築する必要があります。それを“セルフイメージの書き換え”というのですが、その有効な方法の一つが“セルフトーク”と呼ばれるものです。セルフトークとは、自分が自分自身に対して普段からかける言葉を意味します。みなさんは普段、自分にどんな言葉をかけてあげていますか。太陽の光のような言葉をかけているのか、負のオーラを放つ言葉をかけているのか。それによって、自分のセルフイメージは大きく変わっていきます。言葉は、世界を作る光にも闇にもなるもの。だから他者が自分にかけてくれる言葉も無防備に受け止めるのではなく、自分のセルフイメージを自分で守り自分で育てるために取捨選択することが必要です。
他者が自分にかける言葉の中で、自分のセルフイメージを上げてくれる可能性が高い言葉だけを受け取るよう心がけるのも良いでしょう。例えば誰かに褒められたときに「いえいえ、そんなことないです」というのが日本では美徳とされている部分があります。しかし、それによって自分のセルフイメージを高める機会を逃してしまっていることにも気づく必要があります。褒め言葉というのは「言葉のギフト」です。相手が準備をして勇気を持ってかけてくれたギフトなのですから、その相手に感謝の気持ちを抱きながら素直に受け取るのが良いと思います。
このように他者がかけてくれる言葉こそ自分のセルフイメージを形成していくうえでとても大切な要素であると自覚したならば、今度は自分の周りにいる大切な人に対して言葉のギフトを贈ってあげましょう。そうした自分がしてほしいことを他者にしてあげられる人こそが、真の意味で成功した人で幸せな人ではないかと思うのです。