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歌手の宇多田ヒカルさんの日本の育児環境に関するコメントが共感を呼んでいます。

 

宇多田さんは15年7月にイタリア人男性との間に待望の第一子を出産。イギリスの首都・ロンドンで育児に励むかたわら、日本での音楽活動も再開しています。最近ではNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌を歌ったことで露出が増え、話題を呼んでいました。その宇多田さんが10月20日放送の報道番組『NEWS ZERO』(日本テレビ系)に出演。東京の育児環境に対する印象について「日本で子育てをしたことがないので、私の認識が間違っている可能性もあるんですけど」と前置きした上でこう語ったそうです。

 

「東京って、なんて子育てしにくそうなんだろうって、ビックリしてます。外で赤ちゃんが泣いてたら、すごく嫌な顔をされる。ベビーカーを持って外に行って乗り物とかに乗ると、周りがまったく協力してくれない上に、『なんだよ、こんな時間に』みたいな視線を投げかけられたり、実際に嫌なことを言われる。赤ちゃんが生まれて国が成り立っていくのに。将来自分の年金を払う人になってくれるのに。なんでちょっと泣いてるぐらいで嫌な気持ちになるんだろうとか、すごく不思議です」

 

宇多田さんのこれらの意見、お子さんを育てたことのある方には共感するところが多いのではないでしょうか。私も海外生活から日本に帰ってくると、「こんなにも清潔で便利で勤勉で親切な国があるんだ」と毎回のように感動する一方で、子供や年配の方や障害者などに対する配慮という意味では少し物足りなさを感じるのもまた事実です。

 

もちろん、そういう社会的弱者に対して立派な対応をされている方もいます。たとえば目の見えない障害がある方が電車に乗ってきたことがあったのですが、そのときは電車を乗り降りする際に駅員さんがしっかりサポートしていて感心したものです。ただ一方では、たしかに宇多田さんの言うような現実もあります。電車やバスなどの公共交通機関、そしてレストランなどで赤ちゃんや子供が泣いた際に、キツい目で眺める方も目撃するからです。実際、ある調査によると「電車での赤ちゃんの泣き声にイラッとする」と答えた人は、なんと4人に1人にも上るそうです。

 

日本の大多数の方は、心の中では配慮していると思います。そういう意味で、日本の社会に足りないのは「積極的な配慮」ではないかと思います。ここでいう積極的な配慮とは、妊婦や年配の方や障害者やベビーカーのママなどに対して、電車の中で席を譲ったりドアを開けてあげたり、困っていそうなら声をかけてあげたりすることです。

 

そして子供たちに対して、大人はより寛容な姿勢を持つ必要があると思います。日本は世界のどこの国よりもルールをちゃんと守る社会であるだけに、大人のルールを逸脱する無邪気な子供への視線が厳しくなるのかもしれません。配慮の気持ちはあるのに、目立つのが嫌で、また気恥ずかしくて声をかけられない方も多いのではないかと思います。ただ社会が硬直的になりすぎると、心の余裕がなくなります。風との付き合い方が上手な竹のように、柔軟でしなやかな気持ちを持つこと。それが日常でイライラせず、穏やかに過ごすためには大切なことではないでしょうか。

 

子供は未来の希望です。特に日本のような少子高齢化が進んでいる社会では、今の子供たちがこれからの超高齢化社会を支えていくことになります。そういう意味でも子供を親に任せるだけではなく、社会全体が一丸となって温かい心と優しいまなざしを持って、共に育てていくというスタンスを共有することが大切だと思います。

 

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