今日、息子が、
「パパ、恋人はつくらないでね」
と言いました。
「そんなつもりはないけど、どうして?」
と訊き返しました。
「わからないけど、パパは一人でいてほしい」
「パパは寂しく生きていかなきゃいけないの?」
「ぼくがいる」
「でも、お前だっていつか家を出る。大学に入ったら一人暮らしをするようになる。友達と旅行するのがとっても楽しいことに気が付く。友達を頻繁に自分のアパートに招くようになり、実家に戻らなくなる。だろ?」
「そんなのはちょっとの間だから、心配はいらないよ」
「でも、そのうち、恋人が出来る。結婚したいと思う人が現れたら、パパがそばにいると迷惑じゃないか?パパはお前の人生を邪魔したくない」
「パパのことが大好きな恋人を探すし、パパはぜったい若い子にもてるよ」
「その自信はあるけど、実際、暮らすというのはそういうことじゃない。君は好きな人と幸せな家庭をつくってほしい。パパは少し離れた場所でひっそり生きる。でも、一人じゃ寂しいからね。パパのことを親身になって愛してくれる人にそばにいてもらう」
息子は黙ってしまいました。
「10年後、20年後、パパが年を取ったとき、パパのことを君に負けないくらい愛してくれる人がいてもいいだろ? お前を育てたら、パパは自分の人生を少しだけ回復したいんだ。ちょっとでいいから、幸せをもう一度味わってみたいんだよ。いつかで構わない。今じゃなくても……」
「うん、いつかなら……」
私の息子は本当に愛おしい子なんです。こんなに愛されて、私は幸せ者です。私が女性と親しそうに話していると、つまらなそうな顔をする息子です。私は彼の気持ちを誰よりもよく理解しています。
パパに新しいパートナーが出来ると、自分は天涯孤独になってしまう、と思っている節があります。これは理屈ではありません。だから、私は恋人はしばらくつくらないでおこうと決意しています。
あの、しばらくの間だけです。だから、奥様、どうか、私を口説かないでくださいませ!(笑)
さて今回は超簡単、3分モーニングサンドをご紹介いたします。朝というのは時間が本当にありませんね。息子を起こして、朝食を作る。ご主人がいる奥様は私の倍は忙しいことになります。バタバタするので、ちゃんとした料理というものが出来ません。
それで今日はわずか3分で作れる、美味しいサンドイッチの作り方をお教えしたいと思います。
困ったときは、迷わず辻パパの朝サンドをお作りくださいませ。
材料:食パン、小さめのツナ缶1つ、キリチーズ1つ、トマト、マヨネーズ、ケチャップ、醤油少々、オリーブオイル少々、塩・こしょう。 レシピ:ボウルにツナ、キリチーズを入れ混ぜます。そこにケチャップ、マヨネーズを大さじ1ずつ入れ混ぜ、醤油少々、オリーブオイル少々、塩・こしょうで味を調え、パンにスライストマトと挟んで完成です。
簡単で我が息子に大好評のモーニングサンド、忙しい朝の主夫のテクニックです。
「3分モーニングサンド」のレシピはこちらで!
ボナペティ。
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
辻仁成/つじ ひとなり
作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。