映画『東京デシベル』の編集もほぼ終わり、仕事が一段落したので、前から気になっていた衣類の整理に着手いたしました。
「パパ、着るものないよ」と息子が料理をする私の背中に向かって言いました。振り返ると、Tシャツが小さくなってて、おへそが顔を出しています。え? それ夏に買ったばかりじゃない? 11歳の息子の成長といったら半端ありません。調べたら、ほとんどの服が着られなくなっておりました。
同じように、私の洋服ダンスの中の服もそろそろ処分のタイミング。2人で手分けしていらないものを捨てることにしたのです。息子の着古しの中でも、立派なものはカトリック教会に寄付することにしました。
そして、私の洋服はといいますと、それが、なんとサイズ的に息子にほぼぴったりだったのです。やや大きめですが、ちゃんと着ることが出来ます。バーバリーのTシャツとか、ドルチェ&ガッバーナのセーターなど。すでに20年くらい経っているものばかりですが、さすがにブランドもの、縫製も生地もしっかりしていますね。安かろう悪かろうだと買ったときはいいんですが、翌年にはもう縮んだり、傷んだり。いいものは長持ちするから、長い目で見るとお得なんです。ひょっとすると、孫まで着ることが出来るかもしれません。
フランスの若い女性たちはだいたいみなさん、お母さんのおさがりを1点、身に着けています。それが自慢であり、小粋なファッションだったりするんです。息子の家庭教師の先生もお母さんのマフラーやスカートを上手にアレンジして着こなしています。フランスでは親から子へファッションのセンスや愛情が手渡されています。
日本だって、昔はどこでもそうでした。私は自分のおさがりを着た息子が、可愛くて仕方ありません。なにせ、自分のお気に入りの服を捨てずに済むばかりか、愛息に着てもらえるのですからね。
息子はバーバリーのTシャツがすごく気に入ったみたいで、鏡を覗いては微笑んでいます。20年も着ることが出来るTシャツを作ることが出来るブランド、素晴らしいと思います。買うときは高いかもしれませんが、娘や息子さんに譲ることが出来る仕立てのいい服、伝統と技術のなせる業だと思いました。
さて、今日は炊飯器を使った超簡単で、超美味しい鯖のみそ煮炊き込み玄米ご飯を作りましょう。これは鯖の煮込みと鯖の炊き込みご飯の良いとこどりだと思ってください。
材料:鯖1匹、玄米、茅乃舎の野菜だし、合わせみそ、酒、みりん、醤油、しょうが、アンチョビ、みょうが、大葉、オリーブオイル、塩・こしょう。レシピ:お釜に洗った玄米2合、白米の分量の水を入れます。合わせみそ大さじ2をカップに入れ、各大さじ1の酒とみりんで溶きます。よく混ぜ、ソース状にしてからお釜の中に均等にちりばめます。鯖は綺麗に洗い、内臓を取り除いて、さらにヒレと頭部をすべて取り、だいたい3等分してから、中に並べてください。そこに醤油大さじ1、しょうがをざっくりと数枚輪切りにし、アンチョビ2片をみじん切りにしたものを同じように散らします。茅乃舎の野菜だしの中身を入れ、さらに塩・こしょう、オリーブオイル、各少々を風味づけで入れ、炊飯器をセットし、玄米炊きにして炊きます。
白米の水加減、玄米炊きが、ポイントです。炊き上がったら、鯖を丁寧に取り出し(壊れやすいので)、しょうがも取り出し、先にご飯をよく混ぜてお茶碗に盛り、そこに先に取り出した一切れの鯖をのせ、上にみょうが、大葉を乗せ、完成です。
ボナペティ。
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
辻仁成/つじ ひとなり
作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。