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新刊『息子に贈ることば』(文藝春秋社)を上梓しました。2010年2月28日よりはじめたツイッターを通して、今日まで6年間、毎日幼い息子に語りかけてまいりました。もちろん、始めたころは、息子がツイートを読めるはずもありません。そのときは理解出来なくても、いつか息子が読むときが来るのじゃないか、と考え、気に入ったツイートだけをコツコツ保存していたのです。ある種の日記のようなものでしょうか。6歳だった息子も12歳になりました。歳月が経ちましたから、一冊にまとめてみようと思い、原稿を出版社に送ったところ、「ぜひ、これは出版したい」という驚くべきお返事が戻ってきたのです。そして、このような形で世に出ることになりました。ツイッターをはじめた頃は、もちろん、家族がバラバラになるなどとは想像だにしておりませんでした。毎日、こんなに素敵な家族を授けてくださりありがとうございます、と神様に感謝して生きていたくらいですから。

結果として、これらのツイートは当時の自分の心境を物語る記録日記となりました。自分がいつかこの世を去った後の息子への遺言状のようなものでしょう。40歳の年齢差がありますからね。彼が私と同じ年齢になったら、これらの文面は、また違ったメッセージを発するのじゃないかと思います。息子が苦しいときに好きなページを開けば、そこに私の声があるわけです。たとえばこういう文面があります。「憎しみを抱いて生きるのは疲れます。手のひらを返すくらいなら、私はその手をずっと握りしめていたい」「くじけなければ、倒れないんだよ」「不幸はすぐ気が付くのに、幸せってそのときには気が付かないものだね」「息子よ、良い人と付き合えばその仲間になることが出来るよ」などなど。短いメッセージの羅列です。そこに収められたすべてのツイートは息子へ向けたメッセージなのですが、同時に、これらは苦難を抱えた人々が、その日々を乗り越えるための言葉集、と言うことも出来るかと思います。ようやく父親になれたのかな、と思います。やっと…。

ちなみに、表紙の絵や文中のイラストは息子がこの本のために描きおろしたものとなっております。つまり、父と子の合作なんですよ!

さて、本日のムスコ飯は、疲れきった心と身体を温める白菜のスープをご紹介したいと思います。材料:白菜半分、水750ml、生クリーム大 2、オリーブオイル大 2、ごま油小 1、塩少々、黒こしょう少々、クミン1つまみ、パプリカ少々、鷹の爪1本、にんにく1かけら、アリッサ小 2、茅乃舎の野菜だし1袋(もしくは野菜コンソメ1個)、ベーコン少々。

まず、ル・クルーゼ鍋などで細かく切ったベーコンをサッと炒めます。そこに水750ml、野菜だしの素を、袋を破って投入、沸騰させたら白菜をどかっと積み上げます。にんにく1かけらを潰して投入。白菜がしんなりしてきたら、オリーブオイル大 1を振りかけます。蓋をし、弱火でとろとろになるまで煮込みましょう。途中で、生クリームと残りのスパイスを全て入れ、オリーブオイル大 1、ごま油小 1で味と香りを調え、かき混ぜます。味は好みですから、塩加減などはお好みで…。食べごろになるまで弱火で煮込んでください。とっても美味しい白菜のスープが出来上がります。決め手はアリッサですが、唐辛子ペーストで代用可能です。ただ、加減は大事です。優しい唐辛子のアリッサは料理に便利です。高級食材店で手に入りますので、お試しください。ときどき、クミンのスパイシーな風味が口の中で広がって、南国にでもいるような、幸せな気分になれますよ。

ボナペティ!

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

辻仁成/つじ ひとなり

作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。『息子に贈ることば』発売中です。

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