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不思議なことに、生きてること自体が苦痛なときもあれば、生きてるだけで幸せなときもありますね。たぶん、これが一生続き、それが毎日なのです。予期せず不意に離婚報道が世に出たとき、自分はまだ何が起こっているのかわからず、誰がこんなデタラメを流したのか? と驚いていました。真珠湾奇襲作戦当時のハワイの人々のような状況? だったと思います。そこからシングルファザーになり、毎日息子にお弁当を作る生活がはじまるのですけど、2年経ってやっと何が起きたのかを理解しはじめている。鈍感にもほどがありますね。というのか、日常、日々を、毎日を、ただ捌くだけで精一杯だったのです。不思議ですよ。死にたいと思ったこともあります。でも、死んじゃいけないと思う日もありました。息子の急速な成長、思春期を支えないとならない。面倒くせぇ、と投げやりになった日もあります。でも、そういう日に限って息子が「パパ、ありがとう」って言うんです(笑)。

 

今日、中学から無事進級できるという通知が届きました。フランスは落第も多いですから。着実に前進しているのです。離婚報道が出たとき、彼は10歳になったばかり。もう9月から中学2年生です。(フランスは小学校が5年まで)あと6年頑張れば大学です。生きるしかないですね。そう考えれば、今日を、精一杯生き切ればいいんだ、と思えるようになってきました。きっと自分は自分の人生に納得して、死にたいのでしょう。納得出来ればそれでいい。納得しないで死んだら後悔をします。日々の積み重ねが一生を作るのですよね。夜ご飯、何にしようかな、と毎日悩むことこそを私は「幸せ」と呼びたいと思います。

 

さて、今夜、何にするか悩んでいる奥様、「うな重のようなイワシのかば焼き」なんていかがでしょう? 美味しいのに、安いし、夕飯に最高ですよ。

 

材料:こぶりのイワシの開き5~6枚、片栗粉、白髪ねぎ。たれ:醤油大さじ3、みりん大さじ3、酒大さじ3、砂糖大さじ2、黒糖蜜小さじ1(これはなくても大丈夫)

 

今回、私はサーディン(10枚)を使いました。日本だとカタクチイワシの小ぶりのものなんかベストですね。まず、開きます。前にも開き方は説明しましたがおさらいです。包丁の裏でササっと鱗をとる。(少ないのですぐ取れます)頭を切り落とし、肛門から包丁を、腹部へ切り目を入れ、内臓を包丁で掻き出し、流水で洗う。骨の周辺に血合いがありますから丹念にとること。(臭みのもと)。左手の親指、右手の親指を腹の中にぐっと押し込むと、中央にスポッと入る場所があります。親指を左右交互に、骨に沿ってぐぐっと開いていきます。開いたら、中骨を引きながら、尾までひっぱったら、そこでポキッと折る。包丁で腹骨と背びれをとりますよ~。小骨はイワシなら食べられますが、気になるものがあれば抜きましょう。

 

さて、ここからが本番です。大事なことはイワシの臭みをとること。牛乳に浸す手もありますが、もっと簡単な方法は塩を両面に振り、冷蔵庫で30分置けばいいのです。キッチンペーパーで水分を丁寧にとり、片栗粉をまぶし、多めのサラダ油で、まず身の方を下にして中火で8分ほど焼きます。ひっくり返し、皮目を8分程度。最後に強火にし、皮をパリッと色づけします。一度イワシを取り出し、たれをフライパンに入れ、煮立ってから、イワシを戻し、火加減を調整しながらスプーンなどで回しがけします。濃い目に煮詰めて完成。お重にご飯を敷き、かば焼きをきれいに並べ、残ったたれをまんべんなくかけます。中央に白髪ねぎを添え、山椒(分量外)をかけたらふっくらイワシのかば焼き重の完成です。ご家族で分け合って、幸せになってくださいね。

 

ボナペティ!

 

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

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