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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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大阪難波、高架下。

そこにDFOはある。

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まるで雑貨屋のようなオシャレな佇まいだが、
正式名称を「DIY FACTORY OSAKA」というこのお店、DIYの専門店なのだ。

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「Do It Yourself」を略したDIYは、「なんでも自分でやっちゃおうぜ!」という意味で
家の壁紙を変えたり、ソファやイスを作ってみたり
既製品や業者ではなく自分の手で家を快適にすることを指す。
自分でやる分安く済むことや自分好みにできること、完成させることで得られる達成感から
DIYを取り入れる人が増えているようだ。
かつては「日曜大工」としてお父さんの仕事とされていたことも、
今では気軽で実用的なモノづくりとして女性もDIYを楽しんでいるのである。

 

今回わたしはここで溶接に挑戦する。
「溶接女子」という言葉ができるくらい一部女子のあいだで溶接が流行っていると聞いていたので
わたしは溶接をどこかかわいいものだと思っていた。
それが間違いだと分かったのは、体験をはじめて5分のことである。

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DFOでは定期的に様々なDIYワークショップが行われているが、
わたしが参加したのは「2時間本格!溶接でネームプレート作り」。
はじめに鉄板をプラズマカッターで好きな形を切り抜き、
作ったパーツや用意された文字を溶接機で土台にくっつけるというもの。

 

まずは鉄の板にくりぬきたい形を下描きする。

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うさこ鉄板デビュー。
これまで何年もうさこを描いてきたが、鉄の板に描くのははじめてである。
大きいほうが贅沢な気がして鉄の板いっぱいに描いてしまったけど
オシャレってそういうことじゃないよね。今になって反省している。

 

描き終わったら、いよいよカットだ。
その前にこれを、と講師の方に手渡されたのが
目と顔を守るフルフェイスヘルメット、体を守る防熱エプロン、腕から手を守る防熱手袋、下半身から靴を守る足袋(?)。

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「ヘルメットはまだ大丈夫です!」と言われ脱いだが安堵するのは早い。
相手は鉄の板をサクッと切れるレベルの高熱だ。
機械を鉄に押し当てトリガーを引くと、熱が発生し鉄の板が切れる仕組み。

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この時の温度は数万℃に達する。
35℃の気温でもあっちいなと思い、60℃のお湯で危うく火傷する人間が今
数万℃を相手にしているのである。大事件だ。
ゆっくり機械を操れば火花は下に落ちるが、焦るとたちまち火花が我が身を襲ってくる。
あまりにビビりすぎて逆にアドレナリンが大爆発し
だんだん大自然を相手に戦っている戦士のような気分になってきて
「わたしが地球を守るぞ」と訳のわからないことを考えながら鉄板をうさこにカットしていた。

 

プラズマカッターでカットしただけでは端が綺麗ではないので、固定してやすりにかける。

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もちろん火花舞い散る作業。
とはいえ、先ほどに比べたら打ち上げ花火と線香花火ほどの差。かわいいものだ。
だいぶ切り口が滑らかになったら、ついに溶接である。

 

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溶接…。
空気中の放電現象を利用して金属を溶かしくっつける溶接。
太陽の表面温度レベルまで上がると同時に強い紫外線を放つ。
もしも肌を露出して溶接すると日焼けする可能性まであるという。
誰だ溶接がかわいいイメージだなんて言ったのは!

 

フルフェイスヘルメットをいよいよ装着するときがやってきた。

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狭まる視界に、緊張感が高まる。
地球を守る旅もついに最終章だ。

 

土台の鉄の板に、パーツを垂直に合わせ
溶接機のトリガーを引く…。

 

視界が真っ黒に染まり閃光が走った。
しばらく光を押し当てるときれいにくっついている。
魔法のようだった。

 

後から分かったことだが、この閃光を感知するとマスクが遮光するため突然視界が真っ暗になるらしい。
わたしは暗闇と閃光の美しさに、ビビりながら感動していた。

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全パーツ、しっかり溶接すれば
ついに完成である。

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奮闘すること2時間。
命懸けのネームプレートが完成した!

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大袈裟と思うかもしれないが、
目の前で火花飛び散る作業はビビリのDIY初心者うさこに
「神よ…!」と祈ってしまうほどの本気の危機感を与えた。
しかしその分、達成感が胸を占める。
乗り越えて得たものは、決してネームプレートだけではない。
火花を統べ大自然を味方につけた戦いの履歴が、わたしを一人前の勇者にする―――そう確信した。

 

ぜひ皆さんも溶接体験で大自然と戦い地球を救った気持ちになってみてください。

  

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

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