人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
日本…それは世界中のどこよりも昔に建国された謎の島国である。
日本が誕生したのは紀元前660年前。
今より2675年前、神武天皇が即位したときがこの国のはじまり…と定説ではなっているが、
昔のことすぎてハッキリしないのが正直のところであるようだ。
そんな歴史の長さナンバーワンの日本は、
魅力的な「象徴」を数多く生んできた。
「芸者」「舞妓」「侍」「忍者」「刀」「浮世絵」…。
海外からの影響を受けながらも、独自の文化を編み出し続けた日本には
今でもなお国内のみならず世界中から興味を集める文化がある。
今回はその中でも神秘と夢に溢れた「忍者」に焦点を合わせよう。
「忍者」が生まれたのはいつだか、詳しいことは分かっていない。
「忍ぶもの」という名前から考えれば、謎が多いのも仕方ないことだろう。
彼らは独自の戦法“忍術”を用いた。
あるときは絶壁をよじ登り、あるときはいつ敵が来ても対応できるよう全ての部屋に監視できる秘密の空間を作った“忍者屋敷”を建て、あるときは水さえ渡り…。
わたしは何度か三重県伊賀の里にある忍者博物館に足を運んだが
そこではそれまで抱いていた「忍者は漫画の世界の生き物」といったフィクションイメージが覆され
常にあらゆる状況に応えられるよう備えたスペシャリストだったということを学んだ。
彼らは何も魔法のような技を身に着けていたわけじゃない。
信じられない“忍術”の裏にはすべて道具や計算を用いた仕掛けがあり、それを可能にする彼らの肉体がある。
そんな忍者だからこそ、時代や国境を越えて様々な人を魅了し語り継がれるのだろう…。
今では小説や映画、漫画など様々な創作物のモチーフとされることも多く海外にもファンが多い。
中には「今でもニンジャはいる」と信じて疑わない人もいるほどだ。
だがしかし悲しいことに、今の日本に忍者はいない。
何故ならそんな特殊任務を必要とするような戦がないし、機械がある今彼らの仕事は機械がある今彼らの仕事は機械がこなしてしまえる。
江戸時代を最後に、忍者という存在は途絶えてしまった…。
これには外国人もガッカリである。
ところが、どうやら今の日本にも忍者がいるところがあるらしい。
しかもなんとそこでは忍者が最高級のおもてなしをしてくれるんだとか。
一体どういうことだろうか??
わたしは噂の忍者レストラン「NINJA AKASAKA」へ訪れた。
メニューもなく、外からではレストランであることが分からない。
小さな入口から人影が。
あ…忍者だ。
予約していた名前を告げると、担当の忍者がとんでもないところから現れ、席まで案内してくれる。
とはいえ、入った瞬間からわたしたちも修行の身である。
席までの道は、決して楽なものではない…。
狭い通路を抜け、地面がない場所だってあから油断は禁物だ。
そんなときは隠し通路がズズズと降ろして渡るのである…(忍者が全部やってくれるので初級忍者のわたしたちはついていくだけ安心設計です)。
個室「蛍火」の座席についてからも、手渡された巻物のメニューからおいしそうすぎる料理の数々に惑わされながら真に自分の食べたいものを見つけ、隠された呼び出しベルを探し出し忍者を呼びつけなければならない。
とんだ修行だ。
わたしは「大和魂コース」を選択。
NINJAシェフ特製メニューの数々…。
「手裏剣グリッシーニ」で敵を捕らえ、
「サザエ爆弾焼き エスカルゴもどき」でぶち倒し、
「名物 灼熱投石鍋 葉隠之術」の煙で身を隠し、
「特選握り寿司」でおいしさにうっとりし、
デザート「水菓盆栽」を食べる頃には修行を終えた立派な忍者が…(?)。
上級忍者によるショータイムも見せてもらい、
濃密忍者タイムを過ごすこと2時間…。
お店の外まで忍者はわたしをエスコート。
忍者とおいしい料理を満喫し尽したな~~と思いながら街を歩きはじめると、突然声がした。
「ありがとうございました!!」
後ろを振り返ると、そこにはさっきまでわたしを担当してくれていた忍者さんが…!
「良いことがいっぱいありますように。」という巻物をバッと広げ、微笑みながら立っているではないか…!
わ、わ~~~。
これが…これが現代流忍者の本気のおもてなしや~~~!!
その後わたしは5回くらい振り返ったが、彼女はずっとそこに立っていた。
この修行の時間がわたしに与えてくれたのはおもてなしの心でした…!
トリップアドバイザーのページを見ると、全世界から訪れる外国人の喜びの言葉を見ることができる。
「彼らのパフォーマンスは値段以上の最高の時間をくれた。」(スペイン)
「忍者の素晴らしいおもてなし。最高の料理。とてもいい経験になった」(スイス)
「非常に貴重な経験ができた」(ロシア)
「スーパー面白い」(ブラジル)
戦を失った忍者は、人の幸せを願う「おもてなし」忍者に姿を変えて
現代を生きているのである。
「NINJA AKASAKA」
東京都千代田区永田町2-14-3 赤坂東急プラザ1F
くのいちコース、大和魂コースなど様々なコースも。
詳しくは http://www.ninjaakasaka.com/
米原千賀子
ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。