坊主バーで見た！心あたたまるマジック説法

人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…！

お坊さんのお寺を越えた活動が話題になる昨今。
Amazonからも注文できることから話題になった定額で法事や法要が行える「お坊さん便」に、お坊さんのネットお悩み相談サービスも話題。
日本で一番美しい坊主を決める「美坊主コンテスト」なんてものも開催され、
今やお坊さんは何かがあった時だけではなく人々に寄り添う存在になりつつある。
中でも女性に人気なのはお坊さんが話を聞いてくれる「坊主バー」。

日本に数ある「坊主バー」の中でも、
群を抜いてアットホームな大阪・天神橋筋6丁目『大阪坊主BAR』へ行ってきた。

入口から神々しすぎる…！
恐る恐る扉を開けるわたしを出迎えてくれたのは…

もちろんお坊さん。
こんなムーディーな明かりの中お坊さんを見る日が来るとは…。
多くの人にとって法事の時しか会うことのないお坊さんがグッと身近になる。
バーの中はあちこち仏教グッズが置かれ、
「坊主バー」という名前から分かっていたものの現実となって現れたお酒と仏教のまさかのコラボレーションに衝撃を隠せない。

あちこちに飾られる仏さんをモチーフにしたアート作品。
蓮（不浄である泥の中で育ち美しい花を咲かせることから理想的な生き方のアイコン）をモチーフにした照明。

お馴染みの般若心経も。
まさかバーでお目にかかるとは思いませんでしたが。

さっそく飲み物を頼もうとメニューを見ると、

「遊煩悩林（ゆうぼんのうりん）」「風水散華（ふすいさんげ）」
「功徳大宝海（くどくだいほうかい）」ととても戦闘力が高そうな名前のカクテル…！
これが噂の仏教カクテルのようだ。
何を頼んだらいいか分からず聞いてみると、
「功徳大宝海がオススメです。阿弥陀さんからもらってる功徳（めぐみ）は全て宝のようなものなんですよ！っていう意味のありがたいカクテルやから、飲んでみたらどうでしょう」とのこと。
カクテルさえもありがたい。

お酒も揃うと、なんとお坊さんがお隣の席へ。

このバーではお坊さんが横に並んで話を聞いてくれるのだ。
これまで法事でしか会わなかった存在が、隣で呑むまでに…。
一足飛びどころか三足くらい飛んでる感がすごい。

この裕径さんは普段、大阪・池田市にある真言宗のお寺『明光暁院』に従事する。
もちろん、れっきとしたお坊さんだ。

同時に、世界で唯一「マジック説法」を行うお坊さんでもある。
人が集まると、おもむろにロープや赤い玉、トランプといった王道マジックグッズを取り出しマジック説法が始まった。

「気持ちっていうのはすごく抽象的で、目で見ることはできないんですね。その気持ちを目で見せられるようなマジックをお見せしたいと思います」
笑いを交えながら、軽快にマジックを始めてゆく。
笑いあり、驚きあり、どこか胸があたたまるお話あり。
うさこもマジックに参加させてもらい、

まんまと驚かされ悔しい気持ちにもなった。

裕径さんは大学時代に路上で手品を披露していたというほど手品好き。
「お坊さんになった今でも人のためにできないか」と模索した結果、「マジック説法」が生まれたと言う。
しかし始めたころは斬新すぎる試みが理解されず叩かれることも多かった。
「8割が批判やったんで、自分が間違ってるんかな？とも思いました。そんな時、熊本地震のボランティアに行ったんです。そこで別のお坊さんが“炊き出しの後マジックやれ！”と言ってくれました。もともと賛否両論あるしこんな大変なときに受け入られられるのか不安やったんですが…。10分20分もやってたら、僕の周りに人が集まって、人と人が喋り始めたんです。誰もしゃべらず排他的だった空間にコミュニティが出来た。一人のおばあちゃんが僕に言いました。“あなたのマジックのおかげでつながることができた”」
その経験が自信になり、批判だらけの中でも間違ってなかったと思えるようになった。
「マジックで、人を助けることができる。自分がやってること、個性を活かして人を助けたい」