世界では、ひとつの国に多数の民族が共存することもある。
民族によっては、同じ国に住みながら話す言葉や生活習慣が全く違うことも。
少数民族がどんな風に過ごしているのかを知りたいわたしは、56の民族が共に暮らす中国の秘境へ向かった。
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!
中国でも南方に位置する「広西チワン族自治区」は中国でもベトナムの隣にある。
亜熱帯気候に属し、夏はマンゴーがおいしい。
主食は米で、フォーのようなお米で作られた麺をよく食べる。
圧巻の大自然があることや、タニシがおいしい食べ物として受け入れられていることについては、ぜひ「超ド級!地球を味わう中国・広西チワン族自治区!」を読んでいただければと思う。
3年ぶりの広西チワン族自治区だが、「チワン族自治区」という名だけあってこの地は少数民族のチワン族が多く暮らす土地だ。
他にもヤオ族、ミャオ族、トン族など人口の38%を少数民族が占める。
洋服を着て一般職に就く人も多いが、山間など人里離れた土地では昔ながらの生活が営まれていることも多い。
今回は日本でも観光地として名高い「桂林」から車で2時間ほど行った「竜脊(りゅうせき)棚田」へ向かった。
■秘境の絶品グルメ
深夜についたわたしがやってきたのは旅館「红瑶老家」。そんな目立つところに白T干さなくてもいいよね。
「红瑶老家」とは、この地に暮らす「“红瑶族(以下、ホンヤオ族)”のふるさと」、といった意味である。
「ヤオ族」と分類される民族の中でも、住んでいるところや着る服によってさらに細かい分類があり、この竜脊棚田に暮らす彼女たちは「ホンヤオ族」と呼ばれた。
わたしたちが到着すると、迎えてくれたお姉さんもそのひとりだ。
かわいすぎるエプロンばかり着目してしまうかもしれないが、この身に纏っている服こそがホンヤオ族と言われたるゆえん。紅(ホン)、つまり赤い衣装だ。
ホンヤオ族の中には「5、6歳は泥で遊び、13、4歳から刺繍を学ぶ。17、18で嫁ぎ、19、20で子供を抱く」という言葉がある。
自分で身に着けるものは自分たちで縫う、というのが基本らしい。
お姉さんは、看板料理の「竹筒飯」を出してくれた。
竹の中に入れた炊き込みご飯を火にぶっこみ丸コゲにすることで、竹の香りが堪能できるごはんが出来上がるという。
確かに香りがよく、炊き込みご飯なだけあって日本人にも馴染みがある味。
豚肉の燻製とタケノコの炒めも豚肉の風味がぶわっと香り食欲をそそる味わい。ついご飯をたくさん食べてしまった。
■秋の恵みに感謝したくなる棚田
翌朝は山頂へ。
圧巻の棚田が広がる。
10月16日に刈り入れが行われ残念ながら現在は既に禿げてしまっているらしいが、この時は刈り取られる寸前の稲穂が何とも鮮やかに茂っていた。
ここで農耕をし、観光客をもてなして、お土産品を売ってここのホンヤオ族は暮らしている。
民族衣装も堪能させてもらった。
■1メートルを越える長髪
昼間は賑わうショーへ。
ホンヤオ族女子が伝統的な踊りを披露するものだ。
圧巻のピンク。
やはりこの衣服はポイントであるらしく、彼女たちが洗濯する様を踊りで表現していた。
ショーの中盤には奥から長老が出てきて、
おもむろに頭に巻いたターバンを外す。
そのターバンは、なんと自分の頭髪だった。
ホンヤオ族の女子には髪を切らないという習慣があり、その長髪を頭で巻く。
長老だけではない。
今でもその習慣は根付いており、みな床に付くかという長さ。
その特徴から、この村は「長髪村」とも呼ばれているようだ。
こんなに長いのにも関わらず、彼女たちはスッスッと梳いてササッと結ってしまう彼女たちの手際も含めて、驚きの連続だった。
今では世界中同じような街並で、同じような洋服を着て、同じような生活をする中で、昔ながらの生活を続けている人たちがいる。
全く違う価値観の中で生きる人たちがいる。
それは「文化」であり、「財産」だと思う。
お互いの文化を尊重しあい、日本にもある「日本の原風景」を、大事にしていきたい――異国でそんなことを考えた。