豊かな自然と神話の世界が広がる宮崎へ
全国的な寒波がようやく収まった1月下旬から2月初旬にかけ、「神話のふるさと」宮崎を訪れた。小雨の羽田を飛び立ったANA601便は、9時半過ぎに宮崎ブーゲンビリア空港に着陸。曇り空だが、気温は16度。暖かい。今回登るのは、地元ハイカーに愛されている宮崎市郊外の双石山(ぼろいしやま)、天孫降臨の地とされる高千穂峰(たかちほのみね)、霧島連山の最高峰韓国岳(からくにだけ)の三山。いったい、どんなドラマが待ち受けているだろうか――。
【双石山(509m)】奇岩の下には小さな神社が祀られていた
空港から車で約40分、ガイドブックに紹介されている塩鶴登山口に到着した。準備を整え、木の鳥居をくぐって、いよいよ宮崎の山歩きスタートである。最初は杉を伐採した跡地をゆっくりと登り、やがて薄暗い杉林の中を抜けていく。足慣らしにぴったりの緩い傾斜が続く。30分ほどで第一展望所に着くが、眺望はない。そのまま進むと正面に巨岩があらわれる。なんとも奇妙な岩である。風化でところどころ穴があいている。なかでも細かな穴がびっしりと開いたハチノス(牛ホルモン)のような岩場の下に小さな祠が祀られている。針の耳神社だ。ここで道中の無事を祈願。
ここからは巨岩の隙間を縫うように進む。岩の下をくぐり抜けるところも。変化に富んだ山歩きで楽しい。朝方までの雨に濡れた岩に小さな白い花がひそやかに咲いている。イワカガミに似ているが名前がわからない。ところどころにヤマツバキの花も落ちている。色彩感の乏しい、冬の山歩きのなかで触れる数少ない彩りだ。
急峻な岩場を巻くように登ると穏やかな稜線歩きに
しばらく登ると尾根コースと谷コースの分岐点に到達。ここで小休憩。表示板に「初めての方はこちらのコースへ」とある尾根コースを選択。急登をこなすと大岩展望台が目の前に。高さ5メートルぐらいの巨岩にロープと鎖がつけられている。これを登るのか。岩が濡れているので、滑らないよう慎重に身を上げていく。てっぺんに立つと、宮崎の市街が一望できたが、絶景とまではいかない。苦手な人は無理して登ることはないだろう。
大岩展望台から道を少し戻り、尾根への登りに取り付く。ここが結構な急斜面で岩場を巻くようにして登っていく。突然、上の方で「そこ右だ」と二人の子供に指示するお父さんの声が響きわたった。下りてくるのを待ち、すれ違いざまにあいさつ。
「低山なのに結構、スリリングですね」
「このあたりだけですよ。この上は、なんてことない尾根道ですから」
子どもたちは中学生の兄弟のようだ。土曜日に親子3人で山歩き。男の世界である。親子連れと別れ、残りの斜面を登りきると第二展望所。ここからはなだらかな稜線歩きが続く。鬱蒼とした照葉樹林帯の道は、快適なハイキングコースだ。樹木のフィトンチッドを浴びながら、ゆったりと歩く。小さな山小屋を過ぎ、緩やかなアップダウンを繰り返して山頂に到達した。登り始めてから約2時間。最初は「標高500m余りの山だから大したことないだろう、足慣らしにちょうどいい」ぐらいに思っていたが、なかなかどうして。結構登りがいのある山ではないか。
山頂には誰もいない。ベンチに腰掛け、麓のコンビニで購入した弁当で遅めのランチ。食後はサーモスに入れてきたお湯でコーヒーをつくり、まったりと一服タイムを楽しむ。
急傾斜の坂を下り、姥ヶ嶽神社の御神水を頂く
登り始めたのが遅かったから、山頂を後にしたとき、すでに午後3時になっていた。あまりのんびりもしていられない。帰りは別ルートで、九平登山口に下りることにする。小さなアップダウンの後、道は西方向に進む。ここからが急坂だ。斜度が50度近くあるのではないかと思われる傾斜のきつい下りが続く。足を取られないよう、気を使う。
30分ほどで下りきり、姥ヶ嶽神社の御神水のスポットに。「九平の権現水」として重宝され、田んぼや池にこの水を入れると、干上がることなく、その年は豊作、豊漁に恵まれたという。また、山に登る際、この水を飲むと下山するまでのどが乾かないと昔から言い伝えられているという。せっかくなので御神水を一杯いただく。その時、上からトレイルランの青年が猛スピードで駆け下りてきた。元気だなあ!
神社に立ち寄って無事下山できたことを感謝し、参道を下り、県道に出る。あとは出発点までぶらぶら歩いて帰るだけ。周りの景色を眺めながら歩いていると、いい香りが。薄紅色の紅梅が咲き始めているではないか。日向の国の山里に、春が確実に近付いていた。
行程:塩鶴登山口―第二展望台―山頂―九平登山口
所要時間:登り 約2時間/下り 約1時間30分
【グルメ】プロ野球選手や芸能人が足繁く通う「しゃん鍋」の名店
宮崎に行く前、現地事情に詳しい夕刊紙のデスクにおいしい店を尋ねたところ、真っ先に紹介されたのが「酒席 おらが村」(0985-28-1460)という大衆割烹。しゃん鍋(鶏鍋)の名店である。巨人、ソフトバンクなどのプロ野球選手、EXILEをはじめとするミュージシャン、芸能人らが足繁く通うという(店内にサイン色紙がいっぱい)。
訪れたのはプロ野球のキャンプが始まった直後。予約しておいたので、カウンターにすでに鍋の準備ができていた。大皿に鮮やかな色合いの鶏肉のミンチとモモ肉が盛りつけられている。鍋に火が通ると、まずはスープからいただく。出汁の効いた豊かな味わいが口の中に広がる。続いてミンチを鍋に投入。「半生ぐらいでお召し上がりください」とのこと。火が通りすぎないうちに取り、口の中へ。噛むととろけそうな軟らかさ。うまみが滲み出てくる。芋焼酎「日向 古秘」を楽しみながら「しゃん鍋」の世界にはまる。気さくな御主人によると、この地に店を構えて30年になるという。連日大にぎわい。「常に鮮度のいい鶏を選んで御提供しています。長い年月をかけてようやく今の味にたどりつきました」(店主の松山茂樹さん)
超人気店なので予約は必須。宮崎を訪れたらぜひ、立ち寄りたいグルメスポットだ。
ANA 山ガールの宮崎自慢
宮崎交通株式会社
航空部旅客・運航課
久寿米木(くすめぎ) 郁さん(右)
赤木 友紀さん(左)
海も山も絶景がいっぱい 紅葉の高千穂峡でボート遊びはいかがですか
今回ご登場いただいたのは入社1年目の赤木さんと、指導社員の久寿米木さんのコンビ。海も山も好きだというお二人と、先輩社員の山内美保さん、下野ルミ子さんにも加わっていただき、宮崎の魅力をうかがった。
「宮崎は自然が豊富で海も山もきれいなところがいっぱいあります。オススメは、県北の高千穂町にある高千穂峡ですね。約12万年前と9万年前の阿蘇山の噴火活動で噴出した溶岩流を五ヶ瀬川が浸食した浸食谷で、神秘的な美しさを誇ります。秋の紅葉シーズンは絶景ですよ。きれいな水面にボートを浮かべ、切り立った渓谷美を楽しんでいただければと思います」
青い海も広がる。空港からも近い青島にある青島神社は縁結びスポットでも有名だ。
「青島は“鬼の洗濯岩”という奇岩に囲まれた周囲1.5キロ程の小さな島で、散歩道をゆっくりと歩きながら、縁結びの神様として知られている青島神社に向かいたいですね。海幸彦、山幸彦の神話も有名です。『海積の祓』『産霊紙縒』『天の平瓮投げ』など恋愛の願掛けスポットがあり、楽しみながら参拝できます。ビロウ樹に囲まれるように鎮座する元宮への参道は南国情緒にあふれ、木々の間から差し込む陽光が素敵な雰囲気を醸し出してくれます」
山歩き、グルメ、そして縁結び。魅力満載の宮崎の旅はまだまだ続きます。