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エメラルドグリーンの海を眼下に、初夏の沖縄へ――

東京は桜も散り、風薫る快適なシーズンとなった。今回は、GW、初夏を先取りして沖縄の離島・石垣島と西表島を訪ねた。4月上旬、羽田空港6時10分発のANA89便で南ぬ島(ぱいぬしま)石垣空港へと向かう。3時間余りのフライトで、飛行機の窓の下に鮮やかなコバルトブルーの海が見えてきた。しばらくするとエメラルドグリーンと珊瑚。南の島を実感する一瞬だ。この日は空港で取材後、石垣島の西端にある屋良部岳(やらぶだけ・216m)を目指す。いったい、どんなドラマが待っているだろうか――。

空港の外は気温28度 ブーゲンビリアが咲き誇る

南ぬ島石垣空港を一歩出ると気温はなんと28度。陽射しも強烈だ。暑い!初夏どころか、いきなり夏の世界に飛び込んでしまった。空港の玄関口にはブーゲンビリアが咲き誇っている。

レンタカーを借り、いざ出発。於(お)茂(も)登(と)岳(だけ)の麓を通り、パイナップル農園やサトウキビ畑を横目で見ながらのドライブが続く。やがて海沿いの県道79号石垣港伊原間線に入り、崎枝で左折。夕日スポットで有名な御神崎を目指す。目の前に崎枝湾の美しい海が飛び込んでくる。屋良部半島の北側を進み、ほどなく御神崎に到着。白い灯台が東シナ海を見下ろしている。

奇岩、巨岩の先には、広大な海が広がる。浅瀬の透明の水からエメラルドグリーン、そして沖合の濃いマリンブルーへと鮮やかなグラデーションが展開。潮風が気持ちいい。自販機で冷たいさんぴん茶を買い、喉を潤す。さあ、山歩きに向かおう。

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あまりの暑さに、つい超お手軽コースを選んでしまった

御神崎から半島を半周ほど進むと林道が見えてくる。この林道をしばらく道なりに進むと蝶の採集をしている人がいた。登り口を尋ねた。

「すいません、屋良部岳の登り口はこのあたりでしょうか」

「ここから200メートルぐらい行くと小さな標識がありますよ。見落とさないように」

ここまで登山口を示す標識の類はいっさい見えなかった。車を進めるとたしかに、30センチほどの板きれに何か書いてある。道端に駐車し、確認すると白い板に赤いペンキで「屋良部岳」と記されている。その下には「崎枝小中学校卒業お別れハイキング」の文字が。子供たちのハイキングの思い出がたくさん詰まっているコースなんだなあ。

実は、この道は林道開通後にできた新しいコースで、山頂まで10分程度でたどりついてしまう超お手軽ルートである。ガイドブックには、登頂まで50分ほどかかる正規のルートが紹介されていた。最初は正規のコースで登るつもりだったが、寝不足とあまりの暑さのため、つい、お手軽版を選んでしまった……。B級どころかC級山歩きである。

とはいえ、油断は禁物。前夜の雨で道は滑りやすく、傾斜の急な所もある。突然、上から「ヤッホー」という子供の声が聞こえてきた。いろんな山に登っているが、「ヤッホー」は久しぶりに聞いたなあ。やがて大きな岩が目の前に現れた。岩棚(テラス)である。先端部が空中に飛び出していて、オオトカゲの顔のようにも見える(ガイドブックには月に吠えるオオカミと形容されていた。ネットには神の舌という表現も)。

その庇の下を通り抜けるとき、親子連れとすれ違った。声の主は幼稚園児の男の子だった。ついこの間まで東京暮らしだったが、お父さんの転勤で石垣に来たファミリーで、お母さんは沖縄出身だという。

「初めて登りましたけど、景色がすばらしくて感動しました」とお母さんは満足げ。ファミリーを見送り、感動が待ち受けるテラスに到着した。登り口から本当に10分たらずだった。

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深い森の向こうに真っ青な東シナ海が広がる絶景

そこは別世界だった。眼下には深い緑の原生林が広がり、その先に白いビーチとコバルトブルーの美ら海が広がる。御神崎の灯台が小さく見える。左手に目をやると、小浜島、その奥にはでんと構える西表島の姿。右手には川平の海、遠くに北部の山並みが。尖がった山は、きっと野底岳だ。これぞまさしく絶景である。撮影タイムの後は、テラスに座り込んで極上の美の世界を目に焼き付けた。

プチ山歩きでこんな絶景スポットにたどり着けてしまうとは、なんという僥倖。十分すぎるほどの感動を味わうことができた。もし、ここで夕日を眺めることができたらどれだけ素晴らしいだろう。想像するだけでワクワクする。

景色を堪能した後、山頂に向かう。細い道を進むと道が二股に分かれている。前方は下っている。どうやらこちらが正規のルートのようだ。左手に折れ、藪に覆われた道を進むと草の間に三角点があった。夏になったらすっかり草に隠れてしまうだろうな。

往路を引き返し、下山。道が滑りやすいから慎重に降りなければならない。ゆっくりと降りて行くと、木の幹に動くものが。目を凝らして見るとトカゲだ。尾が長い。頭から尾の付け根までは20センチぐらい。尾はそれよりも長い。両手を幹に絡ませて動かない。なかなかかわいい顔をしている。目がクリっとしていて愛嬌がある。こうした小動物との出合いも、山歩きの魅力の一つ。トカゲに別れを告げ、5分も歩くと登り口に。超お手軽C級山歩きなのに、感動は超A級。生涯、忘れない山の一つとなった。

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鮮度バツグンの近海マグロが安い!

石垣島はおいしい食材の宝庫。石垣牛、近海の地魚、野菜、天ぷら、八重山そば、果物、スイーツと、あまりに多種多彩で、一人旅の取材では選択に悩んでしまう。その点、カップルやグループの旅であれば、いろんなものを分け合って食べられるからいい。

今回は魚に焦点をあててみた。お薦めはマグロ。沖縄は近海で獲れるマグロの水揚げが多いので、新鮮な生マグロが驚くほど安い。新鮮な本まぐろの大トロ(2貫)、中トロ(2貫)、鉄火巻きがセットになった「まぐろ寿司」がなんと980円という人気のマグロ専門居酒屋を訪ねた。予約必須とあったが、一人だし、まだ夕方6時前だから大丈夫だろうと思ったのだが、すでに満席で入れなかった。

近くをブラつき、「八重山料理 ゆらてぃく」の暖簾をくぐった。女性の一人客が3組、家族連れ、外国人の2人連れなどいろんな客が入っている。うれしいことにオリオンの生ビールがタイムサービスでジョッキ1杯200円! 「島らっきょうの塩漬」480円と「近海マグロの刺身」780円をつまみにビアタイム。モチモチの生マグロ(キハダだろうか)が甘くてうまい。島らっきょうは口直しにピッタリ。やがてビールから泡盛に。ロックグラスでチビリチビリやりながら南海のマグロを味わう。濃厚な夜の始まりになりそうだ。

ちなみに、メニューには、セット料理もある。牛骨とモツの旨みたっぷりの出汁が決め手の「石垣牛そば定食」は1380円。石垣牛そば、もち米じゅーしー、近海マグロ刺身(小)、漬物が付いてこの価格だ。石垣の味を堪能したい。

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ANA 南ぬ島スタッフの離島自慢

魅力的な絶景ポイント、癒しスポットがたくさんあります

ブルーエースグランドサービス株式会社 空港部旅客課
巻嶋 太勝さん(左)
大城 亜津美さん(右)

巻嶋さんは沖縄本島出身でダイビングと写真撮影が趣味のアウトドア青年。大城さんは西表島出身で、子供のころから海と山で遊んできたアウトドア女子である。おふたりに石垣島の穴場的存在の魅力スポットをうかがった。

「石垣というと海のイメージですが、すばらしい滝をお薦めしたいですね。手軽に行けるのは県道79号線沿い、川平から米原ビーチに向かう途中にある荒川の滝で、市街地から車で30分です。落差5メートルほどの小さな滝ですが、滝壺に浸かってクールダウンするひと時がサイコーですね。於茂登トンネルの近くにある滝もよく訪れます。いずれも亜熱帯の森の中にあり、鳥の声、川、滝の流れの音を聞きながらのんびりしていると現実を忘れることができます」

東シナ海に落ちていく夕日を眺めるひと時もぜひ楽しみたい。

「有名な所では屋良部半島の先端にある御神崎ですね。大きな岩の向こうの海に夕日が沈むシーンは、まさに絶景です。名蔵湾もいいですよ。マングローブが立ち並ぶ海を前景にした夕日を撮影すると、本当にいい写真になります」

さらにお薦めしたいのが星空観測。空気が澄んでいる石垣島では、86ある星座のうち84の星座を観測できるという。

「満天の星空に天の川がきらめき、荘厳な天空ショーが繰り広げられます。12月から6月にかけては南十字星の観測チャンスです。石垣島天文台では週末と祝日の夜に天体観望会(要予約)を開催していますから、こちらに参加するのもいいかもしれません」

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石垣島の山歩き、次回は沖縄県の最高峰・於茂登岳を訪れます。

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