【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第8回>
TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。
【今回の相談内容】
私の実家には70代の両親と40代後半になる独身の兄が住んでいます。離れて暮らしていることもあり、年老いていく両親のことは心配で、できれば兄に結婚して家庭を築いてもらい、両親に介護が必要なときなど何かあった際は、奥さんや子供たちと協力し合って助けてあげてほしいと思っています。しかし、兄に結婚する様子はまったくありません。両親も兄の結婚のことを憂慮していて、私もこのままでは実家の先々が心配です(44歳・会社員・男性)
【回答】
まずは、すこし整理をしてみましょう。抱えていらっしゃるご心配の種は、(1)ご両親さまの今後の生活、(2)お兄さまのこれからの人生、(3)ご実家の存続、でしょうか。いろいろとご心労の多いことですね。お察しいたします。
このなかで、すぐに解決の糸口が見つかりそうなのは(1)でしょうか。今はまだ必要のないご様子ですが、今後、ご両親さまの日々の生活に手助けが必要となる場合に備えて、ご近所の地域包括センターや役所の介護相談窓口とあらかじめ繋がっておくという手があります。そうすれば、いざというときにすぐ動くことができますので安心ですよ。
(2)はいちばん難しいですね。お兄さまは今、鋭意婚活中でいらっしゃるというわけでもなさそうです。ご本人はあまり「結婚」ということにご興味がないのかもしれません。ご家族のご心配は痛いほど伝わってきますが、でもね、お兄さまの「人生」ですから。今の世の中、「結婚」することが「普通」で「幸せ」とは限らないでしょう。ましてや結婚してほしい理由が「両親の今後の生活を助けるため」とは、少々酷なお話に聞こえます(もちろんそればかりではないでしょうが)。お兄さまの結婚とご両親の介護はまったく別の問題。しっかり分けてお考えになったほうがいいですよ。それに、最近は50代で初婚ということも珍しくないようですから、お兄さまの人生にもこれからどういう展開が待っているかなんてわかりません。いずれにしても私たち、一回こっきりの人生ですから。お兄さまの人生は、お兄さまのいいようにしていただきましょうよ。
(3)のご実家の存続については、場合によってはあなたさまがお継ぎになるということもありなのではないかしら。昔と違って兄弟が少ない現代ですから、長男が、次男がではなく、協力し合って子供たち全員で事に当たるというのが賢明なような気がします。
私たちは、「心配の種」は他人にあるような気がしていますが、その「心配の種」を育てているのは、往々にして「自分」です。じつは自分が勝手に「心配の種」をつくり出し、育ててしまっているのです。ときにはちょっと見方を変えて、「起きていること」を別の方向から眺めてみてください。
【プロフィール】
玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。