【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第36回>
TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。
【今回の相談内容】
交際していた彼の人生を狂わせてしまいました。彼とは8年間も付き合っていて、最初は11歳という年の差に迷っていたんですが、占いをしている母に「その人はソウルメイトだ」と強く勧められて交際を始めました。でも時間が経つにつれ、気持ちが冷めてしまって……。彼はプロポーズまでしてくれましたが、私は友人から紹介された別の男性を好きになったり、出会いの場に自ら足を運んだりと、遊びを繰り返して今では別の彼がいます。でもこんな状況に、自分のせいとは重々承知ですが、自分だけが幸せになってしまったという罪悪感から精神的に不安定になってしまい心の病気に。体にもいろいろな症状が出てきて、生きた心地がしません。母には、なぜ私の人生を変えるようなことを言ったのかとフラストレーションが溜まるばかりです。以前付き合っていた彼はいま46歳ーー。いくら男性でも、この年齢で普通の出会いはなかなか難しいと思います。私は人の役に立つことを沢山したいと思って生きてきたのに、ひとりの男性の人生を狂わせてしまいました。この先、この思いを抱えてどういう風に生きていけばいいのでしょうか。(35歳・女性・受付)
【回答】
なんて大変な人生でしょう。「人の役に立つことを沢山したい」という崇高な志を持っておられるあなたさまが、どうしてこんなお辛い運命を背負わされなければならないのか。
この世は本当にままならないことばかりですね。でも、あなたさまも人生始めて35年。そろそろこの澱みから脱出しないといけません。
私はあなたさまよりだいぶ長く生きているので、少し先輩風を吹かせて2つお伝えしようと思います。
1つ目は自分の人生船の船長たる覚悟を持つこと。
「お母さまに勧められてお付き合い」。私たちは独りで生きているわけではありませんから、周りの方からアドバイスをいただいたり、本などのメディアから情報を得ることもあるでしょう。でもそれは、どちらに進むかを決めるための材料にすぎません。最終的にはその材料をもとに、自分で自分の人生船をどちらに進めるかを決めるのです。
ここを勘違いしてはいけませんよ。お母さまに対して「なぜ私の人生を変えるようなことを言ったのか」なんて、もう片腹痛い。あなたさまはどこまで自分の船の舵取りを人さまにあずけてしまうおつもりなのでしょうか。
しかも、自分の船が迷走している責任までも人さまに押し付けるなんて。あなたさまの船の舵取りをしているのは、他ならぬあなたさまです。どんな結果になろうと、人生船の船長たる覚悟を持ってください。すべてはその覚悟からはじまります。
2つ目は自分の頭のハエを追うことに専念すること。
「プロポーズまでしてくれた彼氏に見切りをつけ、別の男性を好きになったり、出会いの場に行ったりと遊びを繰り返して今の彼氏と巡り合った」のですよね。生きていればきれいごとだけでは片付かないこともあるでしょう。若いときはなおさらです。でも、そうやって本当の愛を見つけていくのですよね。
だからそのプロセスを批判するつもりはまったくありませんが、「自分だけが幸せになってしまったという罪悪感から……」というくだりには噴飯しました。
まずそのかつての彼氏さんに失礼でしょう。46歳の彼が今もあなたさまを想い続けていらっしゃるとでも? あなたさまと別々の人生を歩みはじめて、案外せいせいされていらっしゃるかもしれませんよ。
人の役に立つことをしたいのであれば、まずは自分の心と体を良好に保つこと。あなたさまが心と体を壊していては、今の彼氏さんだって楽しくないでしょう。いらんことを考えてヒロインになっていないで、とっとと自分の頭のハエを追い払ってくださいませ。
【プロフィール】
玉置妙憂(たまおきみょうゆう)
看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。