■“大映トリップ”を味わえる不思議な現場
撮影でもっとも過酷だったのは、寒さとの闘いだったと振り返る。
「真冬のグラウンドで、撮影が始まるのは朝7時くらい。着替えも、女性はロケバスですが、男は外。髪の毛を固めるジェルがシャーベットのように凍ってしまうほど寒いなか、一日中半袖、短パンでした」
一方、熱血教師・滝沢賢治を演じた山下真司は、役柄上、長袖長ズボン姿。
「しかも、モモヒキまではいていて。完全装備でしたね(笑)」
山下は、生徒役と打ち解けようと気さくに接してくれたが……。
メークルームで、女子マネージャー役の岩崎良美が椅子に座って出演者と談笑していたときのこと。
「山下さんが良美ちゃんをちょっとくすぐったりしていたんです。最初は『やめてくださいよ』と笑っていたのですが、山下さんは良美ちゃんが椅子から転げ落ちているのに、しつこくくすぐり続けて(笑)。最終的には『本当にやめてって言ってるのに!』と、本気で怒ってしまったんです」
こんな現場の勢いもあり、最高視聴率は21%を超えた。
「電車の中で女子学生がドラマを話題にしていることも。『大木、最近、泣きすぎじゃない』って。たしかに1話に1回は泣いていましたよね。大映ドラマ特有の展開が高揚感につながって、自然と泣けてしまうんです。そんな“大映トリップ”を味わえる、不思議な現場でした」
【PROFILE】
松村雄基
’63年、東京都生まれ。高校在学中にドラマデビューし、’80年代は大映ドラマ常連俳優として活躍。6~8月は『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』にジドラー役として出演
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