『必殺仕事人』で畷(なわて)左門を演じた伊吹吾郎 画像を見る

青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!

 

■『必殺仕事人』(テレビ朝日系・’79年~)

 

姑からは「婿殿!」と小言を言われ、妻にも頭が上がらない中村主水(藤田まこと)だが、実は、晴らせぬ恨みを金をもらって晴らす“仕事人”。重厚なストーリーと爽快な“殺し”が人気となり、’23年に至るまでシリーズが続いている。

 

「『必殺仕掛人』のころから“必殺シリーズ”のファンで、画面の明暗など、カメラワークが面白いなと思っていました。だから『必殺仕事人』の出演オファーはうれしかったですね」

 

畷(なわて)左門を演じた、俳優の伊吹吾郎さん(77)が振り返る。

 

“必殺ならでは”といえば、とにかく台本があがってくるのがギリギリなこと。時代劇とはいえ、当時社会問題化していた消費者金融問題や悪徳商法など、最新ニュースを題材にしていたためだった。

 

「最初のころはセリフを覚えるのも大変でしたが、やっているうちに慣れてきました」

 

そんな現場の雰囲気作りをしていたのは、主役の中村主水を演じる藤田まことさんだった。

 

「クランクインして1週間くらいしたとき、ライティング待ちをしていたら、藤田さんがひょっこりやってきて『伊吹さんは、本当の侍みたいだね』とぽつりと言ってくれたのを覚えています。藤田さんは現場で積極的にコミュニケーションを取る人で、主役だと感じさせないほどスタッフとも気さくに雑談していました。秀を演じていた三田村(邦彦)くんは、初めての時代劇だったみたいなので、よく一緒に食事に行って、時代劇の撮影所の雰囲気とかを話したりしていました」

 

松竹京都撮影所は家族的な雰囲気だったという。

 

「翌日に競馬の天皇賞があれば『よし、明日の分も今日、撮っちゃおうか』と、その場のノリで決まっていくんです。自由度が高く、勢いがあるから、アイデアも出てくるのですね」

 

ドラマの見どころである、悪者の“殺し方”も、こうした勢いから生まれていった。

 

「出演当初は、同田貫という刃渡りが太くて長い刀が武器。主水も刀なので“かぶっているな”と、少し残念な気持ちもありました」

 

そんなこともあってか、プロデューサーから提案があった。

 

「左門が武士をやめて同田貫(どうだぬき)を捨てるということでした。新たな暗殺方法として、手で敵の腰骨をはずすという技を『吾郎ちゃん、どうだろう?』と相談されたんです。てっきり次のシリーズから始めると思っていたら『いや、来週からやろう』と」

 

“腰骨はずし”された敵はありえない角度で二つ折りに曲がってしまう。

 

「だから、上半身役と下半身役の2人が必要。これがなかなか難しくて……。呼吸が合わずに体の折れ方や、絶命するタイミングがズレやすい。けっこうNGの出る“殺し方”だったんです(笑)」

 

【PROFILE】

伊吹吾郎

’46年、北海道生まれ。’68年のデビュー以来、『必殺仕事人』や、17年間「格さん」役を務めた『水戸黄門』(TBS系)など、数多くの時代劇に出演するほか、舞台やCMでも活躍している

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