女優のほかレーサーとしても活躍した岡安由美子 画像を見る

「大学卒業後、原宿でのストリートパフォーマンスを機にアルバムデビュー。映画やテレビの仕事をいただくようになり、『武蔵坊弁慶』(NHK)や『男女7人秋物語』(TBS系)など、話題のドラマに出演できたことで、『HOTEL』のオファーもいただけたのだと思います」

 

こう振り返るのは、岡安由美子さん(63歳)。当時はドラマの仕事の傍ら、A級ライセンスを取得しレースにも出場するほど多忙だった。

 

「でも、『HOTEL』の撮影現場は若手が多くてすごくアットホーム。現場に行くのが楽しみでした。主役の髙嶋政伸君は“芸能一家でお坊ちゃんだから、庶民の私とは違うんだろうな”と思い込んでいたのですが、全然、そんなことはなくて。人当たりがよくて、『飲みに行きましょう!』って、みんなを取りまとめていました。選ぶお店も、2階に座敷席がある昭和な町中華や、新橋の穴場的な飲み屋など、庶民的でおいしいところばかり。政伸君はまだデビューしたての新人で、『ちょっと聞いてくださいよ。時給換算したら数百円でした』って愚痴をこぼしていたことをよく覚えています(笑)」

 

撮影現場では、秘書役の紺野美沙子や高樹澪といつも一緒だった。

 

「監督がかわいがってくださって、よく秘書グループはお昼をごちそうしていただきました。私は東映撮影所の近くに住んでいましたので、空き時間に美沙子ちゃんや澪ちゃんを自宅に招き、お茶の時間を過ごしたこともありました」

 

キャストやスタッフの飲み会もあり、自然発生的に若手同士が集まったという。

 

「『松方(弘樹)さんもお誘いする?』『お声掛けしないと失礼じゃない?』ということになって、たしか政伸君が『いかがでしょうか』とお声がけしたんです。でも、松方さんは、若手の飲み会だと遠慮されて『みんなで楽しんできて』と封筒を渡されました。中を見たら30万円も入っていて、さすが昭和のスターさんという感じで。『自分たちも、こんな先輩になろう』と、みんなで誓い合いました。結局、若手ばかりじゃ使いきれず、余ったお金はお返ししたはずです」

 

同ドラマに出演する大御所俳優は松方弘樹さんばかりでなかった。

 

「丹波哲郎さんは、セリフを覚えてこられない方で(笑)。コーヒーカップの内側とか、いろいろなところにカンペを貼っているのですが、いざ本番となると丹波ワールドができあがるんです」

 

若手と大御所が入り交じった現場すべてが成長の場となったのだ。

 

『HOTEL』(TBS系・1990年~)

「姉さん、事件です」。主人公の赤川一平(髙嶋政伸)のナレーションの通り、ホテル「プラトン」で起こるさまざまなトラブルを通じて、新米ホテルマンの成長を描く。連続ドラマとしては第5シリーズまで、さらに数多くのスペシャル版が放映された人気ドラマだった。

 

【PROFILE】

おかやす・ゆみこ

1961年、東京都生まれ。「ホコ天の女王」として注目され、フジテレビの深夜番組『オールナイトフジ』の司会を経て、ドラマや映画、舞台などで活躍。A級ライセンスを保持するレーサーでもあり、レースのチーム監督としても活躍。公認審判員のライセンスも保持する。

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