TPP加入の意外な落とし穴「著作権強化でニコ動終了も」
TPPの交渉参加は野田佳彦首相(55)の公約のはずだった。ところが、民主党のマニフェストでは『参加は政府が判断する』とあいまいな表現に後退している。その背景を、経済評論家の三橋貴明氏が解説する。
「党内の反対派に配慮したためといわれますが、じつはアメリカが野田さんに『TPPを選挙の争点にするな』と言ってきたんです。TPPに慎重な自民党が勝てば、日本の民意は交渉参加にノーということになる。そうさせないために、アメリカは”内政干渉”したんです」
農業や医療分野をはじめ、TPPのメリット、デメリットはさまざまな分野で語られ尽くしている。だが、じつはTPPには、見過ごせない”落とし穴”がほかにもある。今回の選挙戦で、野田首相と自民党の安倍総裁の党首討論を実現させたニコニコ動画も危機に瀕するというのだ。コンテンツ産業や知的財産に詳しい福井健策弁護士はこう話す。
「コミケが典型ですが、これらはいずれも”二次創作”の分野です。『クールジャパン』といわれる新しい日本文化は、この二次創作の分野から生まれている。ところが、この分野には著作権侵害に当たるものが多い。でも、日本では、あえて訴えるほどではないという”暗黙の了承”で許されてきたわけです」
だがTPPに参加すると、こうした二次創作の分野が軒並み訴訟の対象になる可能性が大だというのだ。福井弁護士は注意点を次のように指摘する。
「キーワードは”非親告罪化”と”法定賠償金”です。現在、著作権侵害は親告罪なので、権利者が告訴しないと起訴できません。ですが、非親告罪化で権利者の告訴なしに処罰できるようになる。法定賠償金は、実際の損害がなくても、かなり高額な賠償金を請求できる制度です。こうした制度を韓国はアメリカとのFTAで丸呑みしています。日本がTPPに参加したら、アメリカは日本にも丸呑みを求めてくるでしょう。12兆〜13兆円ともいわれる日本のコンテンツ産業への影響は、韓国とは比べものになりません」(福井弁護士)
(週刊FLASH12月18日号)