特定秘密保護法が成立した。だが、ニュースキャスターの辛坊治郎氏は「反対派にとって本当の勝負はこれからです。自民党幹事長の石破さんに『テロリスト』呼ばわりされたデモ隊の皆さん、法律ができたから活動終わりじゃなくて、力の見せどころはこれからですよ」と呼びかける。「特定秘密保護法“施行”までにできること」を辛坊氏に解説してもらった。
(以下・辛坊氏)
この法律は、防衛、外交、スパイ、テロ関連の情報のなかで、「とくに重要なもの」が役所によって指定されて、これを漏らすと最高懲役10年になります。国会議論の終盤で、総理や官房長官が提案した4つの新しい機関は、そのいずれもが、特定秘密指定された情報が本当に懲役10年の罰則で守るべき重要情報かどうかを審査する組織です。このこと自体、政府与党の面々ですら現時点で「何が特定秘密か、じつはわかってない」ってことを白状したようなものです。
今のところ、少なくとも数十万件の情報が特定秘密指定されそうですが、こうなると、総理大臣などが全指定情報の適否を判断するなんてことはとてもできず、結局、それぞれの省庁が秘密にしたいものが特定秘密になる可能性が高いってことです。だからこそ、これから法律施行までに作られる「指定されたものが真に秘密にすべき情報かどうか」を判断する機関こそが重要なんだとわかります。
もし、法律施行までにいい加減な組織しかできないのであれば、国民は次の選挙でその意思を示せばいいんです。我が国は民主的な法治国家です。我々国会議員の生殺与奪の権を握ってるんです。
ところで、この「何が特定秘密かを判定する組織」のメンバーをどうするかですが、本来は「与野党の国会議員が秘密会を開いて、その場に特定秘密が開示される」というのがベストの在り方です。
ところが、なぜこのやり方が浮上しないかというと、与党政治家のなかに「野党のなかには、機密情報を外国に漏らしそうな政党がある」っていう疑念があるからです。このあたり、秘密会に出席できる政党要件を厳しくするなどして、なんとか国民の代表者たる与野党議員が、直接特定秘密を審査できる機関を作らなくちゃいけないと思います。
それともうひとつ、役所の特定秘密の乱発を防ぐための有力なツールは、情報公開原則の徹底です。スパイの具体的な名前や暗号など、どうしても公開できないもの以外は、特定秘密に指定した当事者の生存可能性の高い期間内に公開することを原則にするのです。
また、機密指定された情報を絶対に役所が勝手に廃棄しないという原則も必要です。将来確実に、機密指定のプロセスを含めて公開されると役人が思えば、乱用リスクは相当に減らすことができます。
何度でも言います。民主主義社会は、国民が正しい情報を手に入れて、それに基づいて適切な判断をすることが基本なんです。法律施行までは最長1年、国民は政府がこの間に何をするのか、しっかりと見ておく義務があるんです。
(週刊『FLASH』12月31日号)