自衛隊の海外派兵は、「国家滅亡につながる」と、集団的自衛権の行使容認を一貫して反対している首長がいる。もと防衛庁キャリア官僚で、現在、新潟県加茂市長の小池清彦氏(77)だ。安倍政権が強引な解釈改憲で推し進めている集団的自衛権行使の問題。容認されたら、憲法9条を改正したのと同じ結果になってしまう、と警鐘を鳴らしている。

 

小池氏は、集団的自衛権の本質についてこう語る。

 

「たとえば、日本、アメリカ、Aという3カ国があるとする。アメリカがAから攻撃を受けた場合、日本はそのAから攻撃を受けていないにもかかわらず、Aから攻撃を受けたとみなして、Aを攻撃する。これが集団的自衛権の本質です。それがいまの憲法のもとで許されるのであれば、アメリカがAと戦争をしているときは、常に日本もAと戦争をしなければならなくなる」

 

現在は個別自衛権だけなので、日本が攻撃を受けたときだけ防衛すればいい。だが、集団的自衛権の場合は、アメリカの戦争に無限大に巻き込まれる可能性がある。

 

「平和憲法があれば簡単に拒否できますが、ひとたび集団的自衛権の行使が容認された場合、日本は参戦しなくてはならなくなる。その先には、徴兵制が待っています。そして徴兵制が敷かれれば、自衛隊内部は旧日本軍と同じになってしまうでしょう。旧日本軍では、毎晩のように猛烈な私的制裁(リンチ)が行われていました。下士官が徴兵された兵を集めて殴る蹴るの毎日。昔、旧日本軍にいた兵隊が言っていたのが、上官から『おまえたちは赤紙1枚、タダで招集された。軍馬は金を出して集めてきた。だからお前たちは軍馬以下だ!』と。徴兵制がしかれると、そういう軍隊ができあがっていくのです」

 

自衛隊の中は暴力一色となり、階級が上の人間が、下の人間をリンチするという悪習が横行するという。これは旧日本軍の汚点でもあった。

 

「徴兵制で招集された人間が、そこで生き残るためのすべは、たったひとつしかありません。その社会を肯定して生きていくことです。つまり、自分がリンチを受けても、それを甘んじて受ける。そして自分が階級が上がれば、今度は下の人間をリンチするようになる。自衛隊内部は暴力を肯定する人間ばかりが闊歩するようになるでしょう」

 

小池さんによると、招集任期を終え、暴力を肯定する人間が除隊すれば、社会に暴力が持ち込まれる。そして会社だろうが、学校だろうが関係なく、日常で暴力を振るう人間がふえていくという。“暴力社会”になっていくそうだ。

 

「戦前はそうでしたからね。安部首相は戦前を知らないから、美しい社会で、美しい国だったとでも思っているかもしれない。実際の中身は暴力だらけの社会でしたから。学校では先生が生徒をぶん殴る。そんな光景が日常でしたね」

 

現在の憲法の解釈のなかで集団的自衛権の行使が容認されるようなら、国民は安倍内閣に「NO!」と言うしかない。

 

「とにかく今できることは、法案が可決される前に、世論が大きな声をあげて反対運動を起こすしかありません」

 

集団的自衛権行使が容認されたその先には、徴兵制が待っていることを肝に銘じておくべきかもしれない。

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