生活保護の申請窓口では、助けを求めてきたシングルマザーを追い返す“水際作戦”が横行しているという。「働けない事情がある」母親たちが本誌に告白した「生活保護ハラスメント」の実態とは――。
北海道のある50代女性は、障害があり働きに出ることができなかった。障害年金と同居の娘のパート代を合わせても月に12万円程度。それで、生活保護の申請に行くと、「娘さんは、もっと稼げるんじゃないですか」と、暗に風俗業の仕事を勧められ追い返されたという。
京都府の女性の場合は、ケースワーカーにさんざん失礼な質問をされたあげく、「さらに妊娠・出産した場合は生活保護を打ち切る」、「母子家庭には異性と生活することを禁じる」と書かれた誓約書に、強引に署名させられた。
極めつけは、出産したばかりの20代の女性が、窓口の男性に言われた一言。「妊娠中に離婚したの? なんで妊娠がわかった時点で堕ろさなかったの!」。この言葉に傷つかない母親がいるだろうか――。
「シングルマザーはみな必至に働いています。就労率は8割を超えていますが、年収は181万円。これでは子供を養うことはできません。それでもシングルマザーの生活保護の受給率は全体の14.6%と低い。申請時にひどい対応をされて心身ともに疲れ果ててしまい、途中であきらめてしまうことも多いのです」(シングルマザーを支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」東京都千代田区・理事長の赤石千衣子さん)
関東地方に住むシングルマザーの山下和子さん(43・仮名)は、10年もの間、夫のDVに遭い、昨年末、中1の娘と小5の長男を連れ、実家近くに逃げてきた。DVによって体調を崩し、今も心療内科に通っている。彼女は、支援団体「全国生活と健康を守る会連合会」(東京都新宿区)の地元のスタッフに同行してもらい、生活保護を受けることができたという。
「申請のとき、1人だったらたぶんパニックになってました。ケースワーカーにダメだと言われたら言い返せない。生活保護がなかったら、今ごろ路頭に迷っていたかも……」(山下さん)