神奈川県「久里浜医療センター」では’11年7月に日本初のネット依存症外来を開設し、現在までに180人ほどの患者をみてきた。同センター樋口進院長は、ネット依存症患者についてこう話す。
「特徴としては、本人は依存していることを認めません。認めると取り上げられてしまうから。そして、実際に取り上げようとすると、すごい勢いで反抗する。その豹変ぶりに、親が初めて危機感を覚えるようですね。ネットだからとあなどってはいけません。アルコールやギャンブルと同じように、『依存症』とう病気になるんです」
この病気が進行すると、睡眠障害、視力低下、骨密度低下、栄養の偏り、エコノミークラス症候群など身体的な影響が。さらに、勉強しなくなる、不登校、家庭内暴力……日常生活にも大きな支障が出てくることに。
「外来には、主にオンラインゲームに夢中になってネット依存症になった方が多く来ます。場合によっては、ゲームをしている時間よりも、ゲーム内の仲間との会話をしている時間のほうが長いこともあります。自分の言葉に責任を持たなくてよい、ネットのなかでのコミュニケーションが楽しくて、ハマってしまうようです」(樋口院長・以下同)
対人関係の苦手な人や、不安症の人はとくにのめり込みやすいという。また、「目新しいもの好き」「向こう見ずの性格」「平凡が我慢できない」「常にワクワクを求める」というタイプの人も注意。早い人は1カ月もあれば、依存症になってしまう。下のチェックリストで4つの項目に当てはまればもう要注意だ。
・思っていたよりも、長い時間ネットをしていることがある
・友人と過ごすよりも、ネットを選ぶことがある
・ネットで新しい仲間を作ることがある
・ネットの時間が長くて、学業に支障をきたすことがある。
・ネットで何をやっているのか聞かれると、防御的になったり、隠そうとする
・心配事や問題から逃れるために、ネット上で心を静めることがある
・ネットのない生活は退屈でつまらないと感じる
・ネットをしていないと憂鬱になったりイライラするが、再開すると落ち着く
●ネットをしているときに、じゃまされると怒ったり大声を上げてしまう
●睡眠時間をけずって深夜までネットをすることがある
●ネットをしていないときでもネットのことばかり考えてしまう
●ネットをする時間を減らそうとしても、できないことがある
●ネットの時間を増やすために、やるべきことをおろそかにしている
【チェックの数】
1~3個ーー平均的なネットユーザーです。
4~6個ーーネット依存傾向があります。使い方に注意しましょう。
7~10個ーーネット依存の疑いが高いです。使用時間を制限してみましょう。
10個以上ーー生活に支障をきたす可能性大。治療開始の検討をお勧めします。
久里浜医療センターでは、本人に治療意思がある場合のみ、2カ月ほどの入院治療を行うこともあるという。入院中は完全にインターネットから離れることに。
「長時間のインターネットはかなりのエネルギーを使うため、患者はほぼ“枯渇状態”になっているんです。その状態で、何か新しいことを始めようとするのは難しい。しかし、入院してネット断ちをすれば、2週間くらいで昼夜逆転が戻って元気になってきます。“ネット感覚”が薄れていくと同時に、退院後の生活を考えるようになる。それまでに2カ月くらいは必要です」