田舎暮らしに憧れる人と人口流出が止まらない地域の懸け橋となり、まちづくりに貢献している人たちがいる。シェアハウスを拠点に地域おこしに取り組む人たちだ。
岡山空港からくるまで行くこと約2時間。大きなショッピングモールや温泉街を越えて進んだ山深い岡山県美作市に「山村シェアハウス」はある。
「地域おこし協力隊として、美作市に来たのが3年前。美作市の地域おこし協力隊は有名で、自分の力を試したいと思いやってきました」
そう話すのは、出迎えてくれた藤井裕也さん(27)。地域おこし協力隊とは、地域外の人材を、新たな担い手として地域社会へ受け入れ、地域力の維持・強化を目的とした、総務省による制度。
大学時代に社会教育や国際協力などを学び、ネパールでは学校づくりを経験していた藤井さんは、協力隊へ応募。採用されるやいなや、周りの隊員たちの刺激を受けながら、奮闘の日々を送る。
「1年がたったころ、この梶並地区の空き家に住むことになったのですが、広い家に一人でぽつんといるのが耐えられなくて(笑)。そこで友人を呼んで、シェアハウスに向けて動き出しました」
過疎高齢化が急速に進む地域で必要だったのは若手の労働力。古民家の再生、農作業、耕作放棄地の再生など、やることは山ほどある。しかし圧倒的に人手が足りない。
「僕らも手がまわらなくなるほど多くの仕事をもらっていたので、田舎暮らしに興味のある若手にシェアハウスに住んでもらい、働いてもらおうと考えました。そして生活費を得てもらう。それが地域おこしにつながっていく」
「山村シェアハウス」と名づけ、いざ、入居者を募集。さらに「山村ハローワーク」と銘打って入居者に地域での仕事のあっせんも始めた。その中に、引きこもりの青年(20)がいた。
「電球を替えてほしいとか、草刈りをしてほしいとか、依頼があった老人宅へ行き仕事をする。些細な仕事内容でも高齢者に喜ばれていくうちに、そういったコも短期間で成長していくんですよね。ある日メディアに彼が出たのですが、反響がすごくて、引きこもりの子供を持つ親からたくさんの連絡がきました。山村シェアハウスはそういった施設ではないけれども、あまりの問い合わせの多さに、不登校やニートを前向きに受け入れていこうと思いました。今も自立支援が必要な若者を2人受け入れていますが、積極的に活動しています(笑)」
そして入居条件に挙げるもうひとつは、起業したい人。
「地域の資源がたくさんあるので、アイデアと実行力さえあれば、その資源を生かして何かできる可能性がある。意欲を持っている人に、活躍できる場を与えたいんです」
藤井さんは、地域おこし協力隊の任期を今年の3月に終え、現在は、山村エンタープライズの代表として生計を立てている。藤井さん自身に、今後の目標を聞いてみた。
「10年はここにいると決めているんです。その間に僕らがいなくても、若い人たちがたくさん集まる状態になっていればなと思います。あとはプライベートの充実も(笑)。結婚もいつかできれば」