「今年9月16日、茨城県南部を震源に埼玉県熊谷市などで震度5弱。同月27日には御嶽山水蒸気噴火。じつは2つの出来事は、日本列島の地下深いところで密接に結びついています。つぎに危ないのは南関東直下。私は’20年東京五輪どころではなくなることを危惧しています」
そう話すのは、元前橋工科大学教授で地震学者の濱嶌良吉さん。東日本大震災から3年半。あの激しい揺れが記憶に生々しい南関東が、今度は直下型大地震に襲われる危険性があるという。
「注目していただきたいのが、今回噴火した御嶽山の位置。地殻構造で見るとフィリピン海プレートが北米プレートの下に潜り込む境界線を相模トラフと呼び、断層帯になっています。相模トラフは伊豆半島の北で東南海トラフと交わり終わっているのですが、それを点線のようにまっすぐ伸ばした線上に今回、噴火した御嶽山があるんです」
’06年から噴火の予兆とされる山体膨張が観測されている富士山もまたこのライン上にある。いま相模トラフ周辺の地下深くで、大きな異変が起きているのだ。その一端が御嶽山噴火だと濱嶌さんは言う。
「いま周辺地域ではぽつぽつと異変が起きていますが、最終的には遠からず相模トラフの北側(南関東エリア)で震度7クラスの大地震が起きるだけのエネルギーが地下にたまっているということです」
なんとも恐ろしい解説だが、じつはこの震災リスクにもっとも敏感に反応したのが損害保険会社だった。
「今年7月、一般家庭の地震保険料が2割近く上がりました。東日本大震災で約1兆2千億円を支払ったせいもありますが、南関東大震災の損害は横浜、東京湾岸、千葉など首都圏全域で6兆円を超えるとの試算も。そうなった場合の支払いに直面する損保としては、値上げせざるをえなかったのでは」
じつは、地震保険料は各都道府県で異なる。もっとも安いのは日本海側や九州地方で年間6千500円(昭和56年6月1日以降に新築されたもの、保険金額1千万円あたり、保険期間1年)、逆に高いのは東京都、神奈川県、静岡県で年間2万200円と約3倍。ここからも南関東の危険度が高いことがわかる。
「地震保険だけではありません。現在、火災保険の補償期間は最長36年ですが、来年秋から最長10年に短縮になる。迫りくる地震リスクに、とても36年も補償できないということです。大地震は土砂災害など、ほかの災害も引き起こす。保険期間の短縮はあきらかに保険会社のリスク回避なんですよ」
リスクをシビアに算定する損害保険会社がいち早く動いたということは……。巷間言われる、南関東大震災のリスクの裏付けなのかもしれない。