「がんについて、地域の特性を知ることで、生活習慣を見直すこともできるし、意識が変わります。今回の調査は意味があるのではないでしょうか」(県民性研究家・矢野新一さん)
3月26日、国立がん研究センターが都道府県別のがんの罹患率、死亡率などの最新のデータを発表した。今回、本誌は国立がん研究センターが集計した部位別の罹患率(全国がん罹患モニタリング集計)をもとに、『がんになりやすい県ランキング』を独自に算出した。
【胃がん】ワースト1位・秋田県/2位・山形県/3位・新潟県
日本海側に多く分布していることが特徴。ワースト1となってしまった秋田県庁の健康推進課がん対策室も、この結果を真摯に受け止めている。
「遺伝ではなく、塩分の取りすぎが原因と考えています。本県含め、東北地方や日本海側の罹患率が高いのは、寒いエリアなので、漬け物など、保存食をよく食べる習慣があるためだと考えられます」(秋田県庁・健康推進課がん対策室)
【大腸がん】ワースト1位・秋田県/2位・青森県/3位・鳥取県
食の欧米化による動物性脂肪の過剰摂取が起因として考えられ、添加物を使った加工肉の食べすぎも関係しているという指摘もある。
「食の欧米化も原因の1つでしょうが、がんの罹患は高齢者に多いため、秋田のような高齢化が進んだ県が上位にきてしまうことも考えられます。県としては、がんの早期発見も重要視しています。広報誌や郵便によるお知らせだけでなく、5年おきに、直接電話でがん検診を呼びかける『コール・リコール』運動もしています」(秋田県)
【肝臓がん】ワースト1位・佐賀県/2位・大分県/3位・兵庫県
ワースト1の佐賀県庁健康増進課は「汚名を返上したい」と力を入れている。
「長崎県から西洋文化とともに肝炎ウイルスが北部九州に広がったという見解もありますし、かつての日本住血吸虫症の集団感染によって広がったという見解もあります。B型肝炎もC型肝炎も、潜在的に感染していることを自覚してもらわなくてはなりません。’12年に佐賀大学医学部に『肝疾患センター』を設立して、センター長を中心に疫学調査をしたり、年間20回ほどイベントを開催してウイルスチェックの啓発をしています」(佐賀県庁・健康増進課)
【肺がん】ワースト1位・香川県/2位・京都府/3位・北海道
喫煙との相関関係が疑われる肺がんだが、こちらは意外な結果になった。
「ワースト3の北海道は、男女ともに喫煙率は1位です。しかし、ワースト1の香川も2位の京都も喫煙率は非常に低いです」(前出・矢野さん)
この結果に、当の香川県庁も「喫煙率は全国平均並みです。この結果については原因がまだ見当たりません」と困惑気味。
ともあれ、地域とがんの関係性が詳しくわかれば、思い当たる人は、生活習慣を改めるいい機会にもなりそうだ。