夏休みとお盆を前に、そろそろ帰省や墓参の話題も多くなる時期だが、近年、故郷から墓を移す「墓じまい」が急増している。先祖代々の墓を始末し、遺骨を永代供養墓などに移すことだ。

 

「墓じまいという言葉は、そこですべて片づくイメージがありますが、そうではありません。お墓の中のお骨を移さなければ、しまうことはできず、つまりは改葬で、お墓の引越し先が永代供養墓だったり、納骨堂だったり、ということです。特にここ3年ほど、立派な長男がいても、親心として、子どもに負担や面倒をかけたくないと、永代供養墓の相談をする親が増えてきました」

 

そう語るのは、NPO法人永代供養推進協会代表理事で、僧籍も持つ小原崇裕さん(64)。10年前には年間200件程度だった同協会への相談が、3年前からは1千200件以上をキープしているという。

 

しかし一方で、墓を移そうとして、寺から高額な「離檀料」(菩提寺から離れるときに支払うお金)を請求されるなどの問題が増えているのも事実。トラブルを回避するためには、どうしたらいいのか?そこで、小原さんはじめ専門家にかしこい「墓じまい」の仕方を聞いた。

 

【1】まず身内や縁者に連絡、相談する

「よく身内で反対されるといいますが、現実には、そんなに積極的に自分の家以外のことに関わろうとしないのが現代社会。でも勝手なことを言うのも親戚。ですから、先に義理を通して連絡だけはしておくことが大事です」(小原さん)

 

【2】同時に寺にも事前に相談

「お寺に対しても、事後報告ではなく、まずは相談のかたちで、『遠くて体もきつくてなかなか墓参りも行けないので近くに移そうと思っています』などと話してみましょう」(小原さん)

 

【3】無理してまで離檀料を払う必要はない

「遺骨をどう供養するかは、法的には祭祀主宰者、つまり親族に委ねられています。親族が改葬を求めた場合、寺社はこれに応ずる必要があります。もともと檀家制度の取り決めなどで離檀料の金額が決まっていないのであれば、支払う義務はありません」(「老活弁護士」の登録商標をもつ大竹夏夫さん)

 

【4】高額な離檀料を要求する寺は離れたほうがいい。むしろ寺を離れるチャンス

「閉眼供養のお布施(費用)の目安は僧侶に3万〜5万円。更地にする費用の目安は、通常のお墓で石材店に50万円以内。改葬先が永代供養墓の場合、納骨時に費用は一式料金に含まれることが多いです。無謀なことを言うお寺に対しては、逆にこれが離れるチャンスと捉え、実行すべき」(小原さん)

 

【5】20万〜50万円ぐらいなら離檀料を払って円満移転も得策

「私の実体験から言えば、お寺からの提示額が20万〜50万円なら良識の範囲では。いずれにしても自分のできる範囲で、10万円、20万円でもよいのです」

 

【6】お寺の永代供養墓を。霊園のは永代供養墓でなく合葬墓

「できれば、お寺が管理する永代供養墓を。お寺=供養があるわけでない霊園は“合葬墓”と捉えるべきです」(小原さん)

 

【7】永代供養でも年間管理料などの有無を事前チェック

 

【8】寺によってお骨安置後の合祀までの年数が違うので注意を

 

【9】お骨安置スペース、合祀スペースの確認を

 

【10】永代供養墓などの見学時、住職が面接してくれない寺は避けたほうがいい

「まず住職と直接会って、人間性、姿勢を確認。また必ず永代供養墓本堂で手を合わせてみて、深く安心できるかどうかを確かめる。それを終えてから、さまざまな手続き的なチェックをします」(小原さん)

 

墓じまいには、手続きや工事以上に、下調べや駆け引きなど“人間術”の技量が問われるようだ。

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