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看護師・A子さん(44)が大阪市にある「オーク住吉産婦人科」を初めて訪れたのは、40歳のときだった。主治医・船曳美也子さん(55)は言う。

 

「彼女は当時、まだ独身でした。でもパートナーの方もいらして、不妊治療を希望していたのです。しかし『なかなか彼の協力を得られない』と……。そこで私が『では、いまは卵子を凍結しておきましょうか?』と提案したところ、『そうします』とおっしゃいました。A子さんも看護師ですから、卵子凍結のことはご存じでしたね」

 

A子さんには両親やきょうだいがいたが、家族とは疎遠で、それだけに“温かい家庭”への思いは強かった。だが仕事も忙しく、気が付くと40歳をむかえていたのだという。A子さんは41歳で結婚、そして凍結卵子を使って、’15年初夏に44歳で女児を無事に出産した。卵子凍結のメリットについて船曳医師はこう説明する。

 

「例えば30歳で卵子を凍結して、40歳で使用したとします。通常の場合、40歳になると、妊娠率はかなり落ちるのですが、凍結卵子ならば妊娠率は30歳と同じなのです。以前は、卵子を解凍する際に壊れてしまうこともありました。しかし現在は『超急速ガラス化保存法』もあります。病院の技術力にもよりますが、当院では、ほぼ100パーセント卵子が壊れることはありません」

 

もちろん妊娠イコール出産ではない。

 

「“若い卵子”を使えば、何歳でも着床できます。しかし胎児が大きくなり出産にいたるまで、体には大きな負担がかかります。高齢だと血圧も上がったり、糖尿病になったりする可能性も増えるのです。また凍結卵子の場合、早産率が若干高まるようです」

 

ほかのデメリットとしては、採卵の際に針を刺して卵子を吸引するため、卵巣が腫れてしまったりすることもあるという。それでも“いつか子供を!”と、オーク住吉産婦人科で卵子を凍結した女性は、すでに229人にも及ぶという。その平均年齢は41歳。

 

「ほとんどが35歳から40歳前半の方です。みなさん、それぞれご事情がおありで、『パートナーはいるけれども、相手に結婚までは言いだせない』『現在は不妊治療までは考えていない』『パートナーが不妊治療を望んでいない』などのケースがあります。ただ“将来は子供が欲しい”という切実な気持ちは、皆さん共通していますね」

 

 

オーク住吉産婦人科で出産未経験の女性のためのセミナーを開催した際に、アンケートを実施したことがあった。ちなみに『なぜ、もっと早く子供を持とうとしなかったのか?』という質問に対する回答の上位3つは、(1)パートナーがいなかった、(2)仕事上の理由で、(3)心の準備ができていなかったため、だったという。

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