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トランプ大統領は、選挙期間中、陸軍や海兵隊の規模を拡大し、また海軍のために戦艦を、空軍には戦闘機を増やすと述べ、さらに核兵器の近代化を口にしていた。そのおかげか、トランプが選挙に勝利すると、ロッキード・マーティン、BAEシステムズ、レイセオンといった軍需産業の株価は軒並み上昇した。

 

トランプ政権の誕生によって、アメリカとイスラエルの軍産複合体の協力はさらに進んでいくだろう。

 

2014年、イスラエルがガザを攻撃すると、アメリカはイスラエルのロケット防衛システム「アイアンドーム」に対して2億2500万ドル(およそ230億円)の拠出を決定している。これは、ガザでの死者が2000人を超える中での決定だった。

 

このガザ攻撃にも、アメリカやイスラエルの軍産複合体の意図があったと言われている。アイアンドームは、イスラエルの軍需産業であるエリスラ社やラファエル社などの製造によるものだが、アメリカの軍需産業の大手レイセオンの部品も使われている。つまり、イスラエルが起こした戦争はアメリカに利益をもたらす仕組みになっているというわけだ。

 

アメリカのイスラエルに対する対外軍事融資FMF(Foreign Military Financing)は、メルカヴァ戦車などイスラエル国産の兵器を製造する資金ともなっている。アメリカのFMFによるイスラエルへの資金援助は、イスラエルの軍事費全体の4分の1を構成するようになった。

 

親イスラエルのトランプ政権はこの傾向に拍車をかけ、アメリカとイスラエルの軍事協力はいっそう進むに違いない。

 

しかし、軍事費の突出は、教育や福祉を圧迫する。この構造は、世界一の軍事大国のアメリカ(世界の軍事費の4割近くがアメリカ)では極めて顕著に表れ、2015年の財政年度の54%が国防費で占められる一方で、教育や医療・福祉は12%にすぎない。

 

■アメリカがイスラエルに肩入れするわけ

 

それにしても、なぜアメリカはここまでイスラエルに肩入れするのか。実は、アメリカの中東外交において、イスラエル・ロビー(アメリカの中東政策の中でイスラエルの利益を優先させることを考える圧力団体)の影響力には絶大なものがある。

 

アメリカ国内でイスラエル・ロビーの活動を批判すれば、政治家たちは社会的地位を脅かされたり、選挙での当選が難しくなったりする。したがって、アメリカの中東政策というものはイスラエル・ロビーを無視しては成り立たない。

 

アメリカのユダヤ人人口は2015年現在でおよそ716万人、全体の2.5%ほどにすぎないが、投票率が高いという特徴を持つ。それが、ユダヤ人票を政治家たちが重視することにつながっている。

 

もちろん、アメリカのユダヤ人すべてが、イスラエルを支持する人(=シオニスト)であったり、イスラエル・ロビーに賛同したりしているというわけではない。それでも、ユダヤ系の支持者から潤沢な資金を得るイスラエル・ロビーの力は無視することはできない。

 

アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」「ワシントン・ポスト」など主要なメディアにもユダヤ系の人々が多く、またワーナーブラザーズなどハリウッドの映画産業もユダヤ人が興したため、アメリカの世論形成に大きな影響力を持つ。トランプ政権の主要閣僚たちが親イスラエル的な発言を繰り返すのも、そうした背景があるのだ。

 

 

以上、宮田律氏の近刊『トランプが戦争を起こす日~悪夢は中東から始まる~』(光文社新書)から引用しました。

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