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中小企業を中心に人手不足が深刻化するなか、即戦力として主婦の力を求める企業が増えている。“主婦力”を生かした仕事といえば、これまでは依頼主の家で掃除や料理などを行う家事代行や、スーパーやコンビニのレジ打ちなどが定番だった。だが、最近は営業や受付などの「コミュニケーションスタッフ」としての活躍が期待されているという。

 

人材サービス「しゅふJOBパート」の調査機関「しゅふJOB」所長の川上敬太郎さんは、次のように語る。

 

「営業職と聞くと、靴のかかとがすり減るくらいお客さまのところを回り、ノルマがあったりする大変な仕事というイメージを抱きがちです。しかし最近、求人数、応募数ともに増えているのは、ドラッグストアやスーパーなどを定期的に訪問して自社商品の販売企画を提案・実践するラウンダー営業や、マンションのコンシェルジュ、ホテルや企業の受付、マンションのモデルルームでの接客などの仕事です。共通しているのは“コミュニケーション能力”を生かす仕事ということです」(川上さん)

 

主婦は日ごろから、ママ友や近所の人、義父母など、さまざまな立場の人とバランスよく付き合っている。この“コミュニケーション能力”は、日々の生活のなかで自然と培われたスキル。たとえ出産などでブランクがあったとしても、「仕事をするうえで必要なスキル」として高く評価する企業が増えてきているのだ。

 

日本マクドナルドでは9月5日から10月末まで、全店舗で主婦向けの作業体験会を実施し、大量採用を目指している。コンビニ大手のファミリーマートも5月、「2年以内に約1万8,000店舗で10万人の主婦を採用する」と公表した。

 

主婦から見ても、仕事現場に直行し、会社に立ち寄らず直帰できる企業が増えるなど、家庭や育児と両立しやすい労働環境が整ってきている。とくにラウンダーだと、仕事の合間に家に立ち寄るなど、臨機応変にスケジュールを調整することも可能で、主婦にはおすすめだという。

 

また、最近では仕事探しや、応募もインターネットを使ってできるようになり、勤務時間や勤務場所などの希望に合った職を見つけやすくなった。そこで、川上さんや実際に働いている人たちに、自分に合った仕事を見つけるコツを聞いた。

 

■役立ちそうな経験や能力を志望動機に

 

埼玉県在住の吉川美由紀さん(仮名・37)は、東京都内でマンションのコンシェルジュとして働いている。仕事探しはインターネットを使い、パート専門の求人サイトで探し、希望の会社へ応募フォームに必要事項を書き込み送信した。

 

「後日開催された合同説明会に履歴書持参で参加し、その場で面接を受けました。前職はインテリア雑貨の店頭販売員。接客のほか、ディスプレーをチェックしたり、顧客の1日の来客数のデータを集めたりしていました。人の顔と名前を覚えるのが得意なので、その経験を生かしたいと伝えました」(吉川さん)

 

お菓子メーカーのロッテで、ラウンダーとして働く長野県在住の高野仁美さん(52)は、15年目のベテラン。

 

「入社当初は子どもはまだ中学生と小学生でした。手がかからなくなったとはいえ、家庭を優先しようと、土日休みの仕事を探しました。ラウンダーは未経験でしたが、前職の結婚式場の営業で培ったコミュニケーション力を生かせることをアピールしました」(高野さん)

 

■資格がなくても、得意なことはアピールを

 

とくに資格がなくても、前職のスキルや得意なことをアピールすれば、即戦力として採用される可能性も高まる。

 

「資格は仕事の効率やレベルを上げるために取得するもので、ステップアップのための手段。とくに資格を持っていなくても引け目を感じる必要はありません!」(川上さん)

 

高野さんのケースでは、自家用車で移動することが条件だった。長野県内のスーパーを1日4〜5件、週に5日訪問する。その走行距離は1カ月800キロに及ぶ。

 

「スーパーのお菓子担当者さまに連絡を取り訪問、目玉商品用の棚に新発売のいち押し商品を展開させてほしいと商談しています。1週間のうち、どのスーパーに訪問するのかは自分の裁量で判断できるので、仕事を続けやすかったです」(高野さん)

 

こうしたラウンダーは、とくに車を利用する機会が多い地方で需要が高いのだとか。

 

■言葉遣いに気をつけて

 

面接のときだけでなくふだんの生活から気をつけておきたいのが“言葉遣い”。敬語を使い慣れていないと、とっさのときについ乱暴な言葉が出てしまう。

 

「部屋の中の電球を替えてほしいという要望があっても、コンシェルジュの私たちが直接、出向くことはなく、サービス会社に連絡していただくことになります。そういったときこそ『少しお待ちください』と、より丁寧な言葉遣いで接するように心がけています」(吉川さん)

 

■長く勤めるためにも柔軟な対応を!

 

仕事をするうえでタブレット端末やスマホなどが貸与されるケースもある。面接などで「ITはわからないので」などと、かたくなな態度を見せてしまうと、「やる気がない」と思われてしまうので注意!

 

「入社したころは私物の携帯電話で、仕事先に入るときと、作業終了時、会社に報告していました。その後、会社の携帯、タブレット端末を持つようになり、そのたびに操作法を一生懸命に覚えています(笑)。世の中の変化に対応できないと、仕事は続けられませんね」(高野さん)

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