11月22日夜10時過ぎ、長野県北部が大きく揺れた。震源近くの白馬村をはじめ、長野市などで震度6弱の揺れを観測。家屋などに大きな被害をもたらした。
本誌11月18日号「危機迫る南関東大震災」の記事中で、地震学者・濱嶌良吉先生(元前橋工科大教授)が「9月16日の茨城県南部地震、9月27日に噴火した御嶽山は相模トラフが日本列島にかかる伊豆半島の付け根地点から、北東と西北西の100キロ超離れたエリア(詳しくは後述)。いまここで地震や噴火が起きている」と指摘。
今回の白馬村も相模トラフから100キロ超。ほかにも今年9月4日に最大震度5弱を観測した栃木県日光市も100キロ超のエリア。いったいこの地下で何が起きているのか?さっそく濱嶌先生に聞いてみた。
【1】3・11、東日本全体が日本海溝に向かって東側へ動いた
「東日本大震災のとき、日本海溝で断層が大きく崩れ、東日本全体が日本海溝に向かって引っ張られるように動きました。日本列島は太平洋、ユーラシア、北米、フィリピン海の4つのプレートが複雑に重なり合った上で微妙なバランスをとっていたのですが、それが完全に崩れだしたと考えられます」
【2】フォッサマグナ(柏崎−千葉構造線と糸魚川−静岡構造線に挟まれた領域)を東側から押していた力が緩み、圧力が北上することになる
「フォッサマグナ領域は北米プレートの上にありますが、その下へ向かって、南からフィリピン海プレートが潜り込んで圧力を加えている。その圧力の重しになっていたのが東日本地域なんです。3・11以降、プレートが南から上がってくるのを押しとどめていたブロックがなくなったと思ってください」
【3】いま最も不安定なのはフィリピン海プレート深発地震面先端部
「フィリピン海プレートと北米プレート、ユーラシアプレートの境界線は通常、相模トラフ〜東南海トラフの線とされています。これはフィリピン海プレートが潜り始める線。そこから徐々に深く日本列島の下へ潜り込んでいき、その終盤が深発地震面先端部の線です。私が前回、相模トラフの伊豆半島付け根部分から100超と言ったのは、このラインから北側のことをさしていました。日光、茨城南部、御嶽山、長野県白馬村はすべてラインから北に50キロの帯内なのです」
本誌では今回、深発地震面先端部から北に50キロ幅のエリアを『中日本ベルト地帯』と名付けた。なぜいま、この地帯に地震や噴火が集中しているのか?
「プレート潜り込み終了部にもっともプレートの圧がかかるからではないでしょうか。その影響で、このエリアの地下ではあちこちに割れ目が入り、弱い部分から崩壊しつつある」
【御嶽山噴火の連動で活断層が動く名古屋、高山】
「1586(天正13)年、日本海の若狭湾から太平洋の伊勢湾に欠けて巨大地震が起きました。天正地震と呼ばれるものです。今回の御嶽山噴火で活断層が再度動き、天正地震が繰り返される可能性は高い。震源も天正地震と重なるなら、岐阜県高山市付近および愛知県名古屋市周辺になります。心構えだけはしておいたほうがいいでしょう」
【赤城山南麓の前橋エリア】
「糸魚川−静岡構造線で長野県神城断層地震が起きたいま、次は柏崎−千葉構造線が動くのが自然界のバランス。あえてどこかといえば、フィリピン海プレート深発地震面先端部のラインと交差する群馬県・赤城山南麓。具体的には前橋市、高崎市が気がかり」
このほか、今回指摘された帯内では、活動の活発化が懸念される草津白根山がある。最後に濱嶌先生は次のように語る。
「政府も本腰を入れだした富士山噴火や南海トラフ連動大地震もいずれはやってきます。ただ、いまは直近で大地震や噴火が懸念される『中日本ベルト地帯』の住民はハザードマップや避難経路を日ごろから確認しておいてほしい」