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死者・行方不明者20名以上を出した今回の大水害(12日現在)。2つの河川で堤防が決壊するという異常事態は日本中を震撼させた。素人には、どれも同じに見える堤防だが、“決壊する堤防”を見分ける方法はあるのか――。

 

「我々は“痩せている堤防”と言いますが、急な斜面が切り立っているような堤防は基本的に危険ですね。とくに高くて痩せている堤防は危ないです」(愛媛大学・岡村未対教授)

 

江戸川区の元土木部長で『首都水没』(文春新書)の著書がある土屋信行さんもこう言う。

 

「堤防上に桜並木のような樹木が植えてある堤防は危ないんです。江戸時代なんかには、意図的に堤防に桜を植えて、花見客を集めて堤防を踏み固めさせることに使いました。でも時代が経て樹木の根が成長すると、堤防と根の間に水が入り込みやすくなります。新しい樹に定期的に植え替えられていれば問題ないんですが、古い樹木の場合は要注意です」

山の斜面での崖崩れなどを防ぐには、木が繁っていたほうがいいと聞くが、なんと堤防の場合は正反対とは――。

 

「また、草が伸び放題の堤防も注意が必要です。堤防にとって怖いのは、とにかく穴が開くこと。草が伸びていると、モグラやウサギの巣穴や陥没を、管理者が気づけません。定期的に草刈りすることは、堤防管理に重要なんです。かといって、コンクリート製なら安全かというと、そういうことでもありません。コンクリート堤防の中は土ですが、内部の土が崩落したり、空洞が出来ていても、外からはわからず、対策が遅れてしまうのです」

 

鬼怒川の決壊で注目を浴びる「堤防の危険度”だが、前出の岡村教授はこうも話す。

 

「じつは、堤防の強い弱いというのは、国交省でも100%は把握できないんです。堤防というのは、古事記の時代から、農民なんかが少しずつ積み上げて作ってきたものなんですよ。ですから、実際の堤防の中がどうなっているか、我々も知りたくてしかたがないのですが、よくわからない。最近ようやくボーリング調査ができるようになりましたが、堤防があるからといって、その質が保障されるものではありません」

 

ひとたび遭遇すれば、日々の暮らしを根こそぎ押し流してしまう水害。まずは、自分の住んでいる地域の河川、そして堤防についてよく知ることが、いざというときに助かる第一歩になる――。

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