家計不安と大学の授業料が上がり続けたことで、経済的理由から進学を断念する人が増えているという。一方、給付型の奨学金も増えている。学生数が減少するなか、優秀な学生を集めたい大学、企業や民間団体、自治体などが提供している。
そこで「これからの奨学金は、借りるのではなく、もらうもの」と言う経済ジャーナリスト・荻原博子さんに、給付型奨学金を紹介してもらった。
『JT(日本たばこ産業)国内大学奨学金』は、JT指定の全国33の国公立大学入学者に、入学金30万円と年間授業料54万円を支給。加えて、月額奨学金が4年間、自宅生には5万円、自宅外生には10〜12万円。さらに、自宅外生には、入学一時金30万円も追加される。
『石橋奨学会』は、自宅生には月4万4千円、自宅外生には月5万円が4年間支給される。世帯年収700万円以下が条件で、高校3年生の12月に募集する。
居住地を限定する奨学金もある。
『ツツミ奨学財団』は、埼玉県内の大学に通うか、埼玉県内の高校を卒業した大学生に、月4万5千円の奨学金を4年間支給。
『小野奨学会』は大阪府下の大学の在学生に月3万円を4年間。ほかの奨学金と併用できないものが多いなか、これは併用可能で、募集規模も360人と多い。
医歯薬系の学生は、貸与型奨学金でも返済が免除されることがある。『東京都地域医療医師奨学金』は、東京都在住か在学者で、指定する私立医大の東京都地域枠入学試験に合格した学生に、入学金と授業料などの全額と、生活費月10万円を6年間支給。総額2千万円を超えるが、医師免許取得後、都の指定するへき地診療所や救急病院などで9年間勤務すれば、返済は免除される。
「これらは一例です。日本学生支援機構や各大学のホームページに、たくさん紹介されています。国公立大学の4年間の学費は約520万円、私立大学理系学部だと約810万円とのデータがあります(平成25年12月・日本政策金融公庫)。親がすべてをまかなうのはきびしいでしょう。フランスなど先進国の多くは『教育が国の基礎を作る』として、大学までの授業料は無料です。日本は奨学金を増やすほかにも、長い目で見た教育のあり方を議論することから始めるべきじゃないでしょうか」(荻原さん)