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「公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、’18年10月~12月期の運用実績で、14兆8,000億円もの運用損を出していたことがわかりました。これは現在の方式で運用を開始した’01年以降で、最大の“赤字額”です。それまで165兆円あった積立金が、150兆円まで目減りしてしまいました。積立金は、保険料、国庫負担に次ぐ、年金の原資です。年金の危機といっても過言ではありません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんだ。私たちの老後を支える大事な年金積立が“大溶解”している。

 

GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う独立行政法人で、年金基金のなかでは世界最大の資産を持つ。現在、公的年金は現役世代の払う保険料を、高齢者に分配する“賦課方式”を取っているが、少子高齢化がより進むと、現役世代の負担が大きくなりすぎてしまう。そこで、将来的には積立金を少しずつ取り崩して制度を維持する予定になっている。GPIFはそのための積立金を運用し、少しでも増やすという役割がある。

 

GPIFがリスクの高い運用制度となったのは、第2次安倍政権になってからだという。

 

「もともと、GPIFはリスクの低い国内債券を中心に積立金を運用してきました。ところが、’14年10月から、株式投資の割合を大幅に引き上げたのです」(北村さん、以下「」内は同)

 

国内債券での運用割合を60%から35%に半減させて、高い運用益が見込まれるがリスクも高い株式での運用割合を24%から50%に倍増させた。現在は超低金利時代。国内債券では運用益を見込めないために、株式の割合を増やしたというのが建前だが……。

 

「GPIFの豊富な資金を株式市場に投入することで、株高を演出しようとする狙いもありました。つまり、アベノミクスの成長戦略として、年金積立金に手をつけたということです」

 

もくろみは成功し、当時1万4,000~1万5,000円台を推移していた日経平均株価は2万円を超えた。

 

「株高には誘導できましたが、年金資金は株価や為替変動のリスクに今まで以上さらされるようになったのです。’15年度には中国株の暴落の影響もあって、GPIFは5兆円の運用損を出しました。そして今回、昨年10月の世界同時株安の影響を受けて、約15兆円もの運用損を出していたことが発覚しました。多くの国では、基礎年金の積立金は、安全性の高い国債で運用されています。こんな“ギャンブル”みたいなやり方には、問題があると言わざるをえません」

 

それでもGPIFは’01年からの累積の黒字額が56兆6,745億円あると喧伝している。だが、実は’14年10月以降に積み上げた黒字額は、この“大損失”で半減し、現在15兆4,000億円になった。ふたたび今回のような損失を引き起こせば、すべて消し飛んでしまうことになる。

 

「しかも、株式市場に明るい材料はありません。相場は1年先を見て動くもの。現在はオリンピック特需のおかげで、建設事業が活況ですが、今年の秋にはすでにオリンピック後を見据えて、相場が冷え込むと予想されています。それならば、株価が下がる前に売り切ってしまえばいいと思うでしょうが、GPIFの株の保有数は莫大なため、日本全体の株価にも影響を与えてしまう。つまり、株価の暴落を招きかねないので、軽々に売ることもできないのです」

 

アベノミクスの株高演出のために使われた結果、わずか3カ月で15兆円が消失してしまった公的年金。時の政権や、国の都合で、私たちの年金がどんどん消えていく――。

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