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「政府の予定では’21年3月から、マイナンバーカードを健康保険証の代わりとして、病院窓口で使えることになります。医療とマイナンバー番号を近づけることはたいへん危険です」

 

こう警告するのは、神奈川県保険医協会・事務局主幹の知念哲さん。マイナンバー制度が法制化される前から、ずっと研究をつづけている方だ。

 

そもそも政府がマイナンバーを国民全員に振り分けたのが’15年末。翌年、身分証明書としても使える顔写真付きマイナンバーカードの発行を始めた。政府は、順調にいけば’19年3月にカードの発行枚数を8,700万枚と想定していた。

 

「ところが現実は、まだ1,500万枚。国民の12%にしか交付されていません。正直、国民にとって、使い道がないからです。この遅れを打開するための施策のひとつが、今回のカードと健康保険証の一体化策だと考えられます」(知念さん・以下同)

 

保険証とカードが一体化すると、まずいちばん心配されるのは、カードの紛失だ。

 

「現状、マイナンバーカードはほとんど使用する機会がないので、ふだんは自宅の引出しなどにしまっている人も多いはず。ところが、保険証として使えるとなると、常に財布などに入れて持ち歩くことになります。そうなれば、病院の待合室に置き忘れたりすることが多発するでしょう」

 

マイナンバーカードはいったん紛失すると、事後処理がたいへんだ。情報漏洩を防ぐため、番号自体を再発行しなければならない。

 

さらに病院の窓口では、別のトラブルも想定される。

 

「カードを保険証として使用するには、病院でカードのICチップを読み取る端末などを設置する必要があります。ただ端末を導入するかは病院側の任意なので、導入しないところもあると思います」

 

つまり、病院によって、マイナンバーカードを保険証として使えるところと使えないところが出てくるというのだ。これは混乱する。

 

また高齢者などが持参したカードを端末にかざす際、どうしても介助が必要になることが考えられる。もしその人の番号が流出した際、通院している病院関係者が疑われかねない。

 

「こうしたリスクを勘案すると、病院側も導入には慎重にならざるをえないのが実情でしょう」

 

私たちがこのリスクを回避する手段はあるのだろうか?

 

「カードと保険証の一体化が始まってからも、従来の保険証は使えます。保険証であれば、これまでどおり、どの病院でも間違いなく使えて便利。政府の思惑に乗らず、カードを作らない、カードを持たないことが、個人情報を守るうえで最大の自己防衛だと思います」

 

マイナンバーカードを作ってもリスクが増えるばかり。あなたも申請前に、本当に必要か、慎重に考えることが大切といえそうだ。

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