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7月18日、京都市伏見区の「京都アニメーション」第一スタジオで、いつものように作業に没頭していたスタッフたちを突然襲ったのは、紅蓮の炎と大量の黒煙だった。

 

24日時点で命を落としたのは34人、そして負傷者は34人。亡くなった34人のうち女性は20人、負傷者では17人。犠牲者のなかにはたくさんの女性たちがいたのだ。

 

彼らの夢や未来を一瞬にして焼き尽くした青葉真司容疑者(41)だが、その犯行理由は謎に包まれている。自らも大やけどを負い、現場から逃げてきた容疑者を介抱した女性(61)は、こう証言した。

 

「最初は、火事の被害にあった京都アニメーションの人だと思っていましたが、あの人たちはきゃしゃな体格の人が多いのです。それにしてはガッシリしていましたし、お腹には刺青がありましたし、違和感を覚えるようになりました。そのうち数名の警察官が男性を取り囲んで『何でこんなことをしたんだ?』など、質問を始めたので、ようやく犯人らしいとわかりました。男性は『パクられた』ということを言っていましたが、そのときは“京都アニメーションに対して強い怒りを感じているんだ”と、思いました」

 

元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三さんは次のように語る。

 

「今回の事件の犯人は、事前に包丁やハンマー、ガソリンを入れるための携行缶や台車などを用意しており、本人としてはいろいろな状況を想定し、周到に用意したようです。彼なりに計画性があったわけですが、あえて放火という方法を選んだのは、特定の個人ではなく、京アニという会社全体に深い恨みを持っていたからだと思います。しかし、そのいっぽうでガソリンを40リットルも購入して火をつけるという行動は尋常とはいえません。ガソリンは1リットルでも危険ですし、結果的に容疑者自身も火に包まれたようです。一連の行動からは視野が狭く、ストレス耐性が低いという人物像が浮かび上がってきます。またストレス耐性が低い人物は、トラブルを起こしやすい性格でもあります」

 

佐々木さんの分析どおり、実は青葉容疑者の半生はトラブルに彩られていた。’99年からは埼玉県春日部市のアパートで1人暮らしをしていたが、アパートのオーナーはこう述懐する。

 

「ふだんはおとなしい人で、コンビニでアルバイトをしていたようです。家賃も滞ることはありませんでした。ところがある日、警察官が来て、彼を逮捕したのです。窃盗事件と聞いています。そのことがきっかけになり、アパートから出ていくことになりました」

 

この事件では不起訴処分となったというが、’12年には茨城県坂東市でコンビニ強盗を働いてまた逮捕されている。

 

「包丁を持って押し入り、2万円ほどを盗んで逃げたのですが、その半日後に警察署に出頭し、強盗と銃刀法違反で逮捕されました。裁判官の心証も良くなかったのか、懲役3年6カ月の実刑判決を受けました」(前出・社会部記者)

 

このころから容疑者の凶暴性が目立ち始めている。当時彼は、茨城県常総市のアパートに住んでいた。管理人はこう証言する。

 

「(強盗で逮捕された後)承諾をとって、荷物を整理するために部屋に入ったのだけど……。すごかったのはハンマーで壁が壊されていたこと。壊しているところは見ていないけど、壁をドカンドカンやっている音は聞こえていたから。それにノートパソコンもあったけど、メチャクチャに壊されていた」

 

服役後は更生保護施設での生活を経て、埼玉県さいたま市内のアパートに転居。そこでも夜中に騒音を発したりと、近隣住民との軋轢を起こしていた。そして事件発生4日前の7月14日。

 

「隣室の男性によれば、別の部屋の音を勘違いした容疑者が、壁をドンドンと叩いてきたそうです。男性がインターホンを鳴らし、勘違いであることを告げると、『黙れ! 殺すぞ。こっちも余裕ねえんだ』と、繰り返し、髪の毛を引っ張られたそうです」(前出・社改部記者)

 

“余裕がない”とは、妄執に囚われて、身勝手な怒りを抑えきれなくなったということなのだろうか? それにしても容疑者の半生を振り返ると、これほどの予兆がありながら、凶行を防ぐことができなかったのかと、慄然とする。

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