開催直前にも関わらず、不祥事が相次ぐ東京オリンピック・パラリンピック。そんななか、7月14日に発表された開閉会式のコンセプトにも、批判が集まっている。
今回発表された五輪パラ4式典の共通コンセプトは「Moving Forward(ムービング フォワード)」、五輪開会式は「United Emotion(ユナイテッド エモーション)」、五輪閉会式は「Worlds we share(ワールズ ウィ シェア)」。
なんと、ここには今大会の理念の一つとして招致の時から掲げられてきた「復興五輪」の言葉が見当たらないのだ。
’13年9月、ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、招致演説に臨んだ安倍晋三首相(当時)は、福島第一原発の汚染水漏れに対し「アンダーコントロールされています」と安全を約束。また、’18年に福島市の野球・ソフトボール会場を訪れた際には「復興五輪と銘打って、復興した姿を世界に発信したい」と発言していた。
そんな“前提”がまるでなかったかのように発表された今回のコンセプトにはSNS上で批判が相次いだ。
《オリパラ開閉会式のコンセプトに復興五輪の文字がなくなったって、ちょっとそりゃねぇーんじゃねーかい、って感じなんだが》
《発表された東京オリパラ開・閉会式コンセプト。本当にもう復興五輪という言葉は消え失せたんだな》
さらに式典の制作進行を管理するエグゼクティブプロデューサーの日置貴之氏(46)の“言い訳”も物議を醸している。
コンセプト発表当日、日刊スポーツのインタビューに応じた日置氏。「復興五輪」という言葉をコンセプトに盛り込まなかった意図について、《省いたつもりはない。たまたま書いてないだけ。演出には復興の観点もあり、1ミリも忘れていない》と釈明。またどのように岩手、宮城、福島の方々にメッセージを届けるのかとの質問には《見てもらえば分かる》。さらに、コンセプトが全て英語であることについては《コンセプトの日本語は用意していない。世界に分かってもらいたいということで英語のみになった》と答えていた。
この日置氏の“言い訳”に対してもSNS上では批判が殺到。
《復興五輪をたまたま書いてなかったとか見ればわかるとか、そんな言い方あるか?》
《書いていないけど見てわかれと》
《復興五輪は忘れてた説》
同インタビューで「受け手の気持ちになって考えることが唯一、コミュニケーションの今後のあり方だ」と発言していた日置氏。しかし、このインタビューを読んだ人の気持ちに思いは巡らなかったのだろうか。
そして復興五輪としての実情も厳しいと言わざるをえない状況だ。今年3月11日の「東日本大震災10周年追悼式」での式辞で、菅義偉首相から「復興五輪」への言及はナシ。また東京新聞によると、一部の国から福島県産食材への懸念が示されたことから、選手村の24時間営業の食堂の食材には産地の表示がないという。
五輪を通じて東日本大震災から復興しつつある被災地の姿を世界に伝えることを、理念の一つに掲げていた東京五輪。開閉会式を見ればわかるという“復興”は、果たして世界中の視聴者の胸に届くのだろうか?