■家族との“密”が悩みを生むケース
前出の杉本さんによると、「北海道いのちの電話」が受けている電話の範囲では、家庭問題を理由にした相談が多くなったという。
「“コロナ禍で失業した”“体が弱いのにコロナで収入が減って不安”“自営業だが、コロナのせいで仕事が減って大変な状況”といった相談もありましたが、職場の人間関係で悩んでいるといった、勤務問題はコロナ以前より少なくなった印象です。テレワークが増えたからではないかと考えます。
ただコロナ禍で家族と密になったことで、かえって問題が起こるケースが多かったようです。“夫が出ていってしまった”“娘に家から出ていってほしい”といった家族仲の険悪さを感じさせる相談内容、さらには“娘から暴力を振るわれ、お金を要求される”“夫から暴力を受けている”などDVの相談も多くありました」
また、「熊本いのちの電話」事務局長の赤星敦さんも、コロナ禍で女性の相談は増えたと話す。
「私たちが受けている電話相談は、若年層は少なく、40代、50代が大半を占めています。感じるのは、コロナ禍で職を失った方の相談が増えたこと。また特に女性で自殺傾向のある相談が増えていて、その件数は’19年までは男性のほうが多かったのですが、’20年は女性が男性を上回るほどでした」
近年ではSNSでのやりとりで相談を受ける団体もある。SNS相談に取り組む「東京メンタルヘルス・スクエア」の新行内勝善カウンセリングセンター長に話を聞くと、
「ツイッターなどSNSで“死にたい”と投稿している人に対して、相談窓口の情報を送ることもあります。相談の内容によっては、警察に電話し、相手の場所がつかめたら保護してもらうことも。
私たちに届く相談の8割が女性で、20代が多く、次いで10代、30代。働く女性ですと、職場や家庭内の人間関係での悩みが主です。これまでは周囲と話すことでストレス解消していたのが、コロナ禍で人と会うことができずストレスがたまっている印象があります」