■家をでると告げると「あなたは最低な人間」と罵倒される
そんななか今年8月、再び事件が起こる。
「母の帰りが遅くなる日に、『今夜の晩御飯はざるそばで』との連絡があったんです。その後、『10分で家に着くから』って来て。それで茹でて用意してあげていたんですが、帰ってきた途端、『そばの気分じゃないし』となぜかなじられて。
どう話しても『いらない』の一点張り。しかも、私の目の前で別のものを食べ始めたんです。さすがに怒りやら混乱やらで、もう気持ちがぐちゃぐちゃになって……」
その1年前にも、同様のことがあったというJさん。とっさに家を飛び出して、ホテルに泊まった。涙が止まらなかった。しかし、ここで転機が訪れる。
「友だちに『しんどすぎて死にたい』と電話しました。すると、その子の知り合いにも私みたいに“親ガチャ”で人生が左右された上に早くして亡くなった方がいるそうです。
でも、友だちいわく『その親は“子供に死なれた可哀想な親”を強調するようになった。子供のことなんて何にも思っていないんだよ。だから、死んだところで復讐にはならないんじゃないかな』って言われて……。涙でぐしょぐしょになりながらも、『それじゃ死に損だ!』って(笑)」
そしてJさんはその日のうちに部屋を探し、翌日に内覧。即日で家を決め、数日の間は友人の家で宿泊。その後、母のもとへと戻った。「家を出たい」と伝えると、「そんな気がしていた」と母は言ったという。
「意外とすんなり受け入れられたから、『もう家も決めています』と話してみたら豹変。『何それ! タイミングが違う!』と激高されました。そのあと夜7時から夜中2時まで、7時間かけて説得しました。何を言ったか、私も覚えていないんですよ。
新しい家に移るまでの1ヵ月間、『あなたは最低な人間』と罵倒され続けました。あと母がベランダで急に笑い出したかと思うと、よくわからない言葉を叫んだり。でもある日、『あなたが家を出るまで仲良く過ごそうね』ってLINEが来たり。『怖~!』って(笑)」
紆余曲折ありながらも、無事家を出ることができたJさん。「経済的に今は苦しいです。でも、精神面はすごくラクになりました」といい、こう続ける。
「母と同居していたときは、とにかく自分の気持ちで精いっぱいでした。でも今は、気持ちが少し落ち着いてきました。
還暦の当てつけに死のうと思っていたけど、今では『なんで私が死ななくちゃいけないんだ』と思います。実はいま転職も考えているんですよ。母には、『自分の人生を生きているので、もう放っておいてください』と言いたいです」