誤った基準で補償がゼロに…脳性麻痺児の母が救済訴える
画像を見る 約500人の子どもたちが補償対象外となっている、障害児育児は多くの時間と労力を消費する

 

■母親たちが明かす“経済的な厳しさ”

 

制度の改正は喜ばしいことだが、いっぽう中西さんは異論を唱えた。冒頭のように、すでに対象外とされた子供への救済措置が行われないためだ。

 

「『誤った基準で審査されたのは納得できない』と感じ、親の会を結成することにしました。2009年から今年の12月31日までに生まれた子供に対しては現行制度のまま。その間、“補償ゼロ”となった児童は500人を超える見込みです。

 

機構に剰余金は約635億円残っています。剰余金は、出産時に支給される出産育児一時金から掛金が支払われており、税金ではありません。十分500人を救済することが可能であるにも関わらず、救済措置を取らないのは大きな問題だと考えています。また、補償対象外となった約500人は分析が行われておらず、脳性麻痺発症の原因を分析し、再発防止に努める制度の趣旨にも反しています」

 

さらに今回、『産科医療補償制度を考える親の会』に参加する別の女性2人にも取材した。ともに重度の脳性麻痺児を育てているAさん(40代)とSさん(30代)だ。2人は「補償の対象になっていれば……」として、“経済的な厳しさ”についてこう明かす。

 

「脳性麻痺児を育てるには何かとお金が必要です。子どもの体が大きくなってきて、住宅をバリアフリー化する必要が出てきています。しかし、夫の給料だけでは5人家族で生活するのに精いっぱい。吊り下げ式のお風呂50万円、玄関のスロープ40万円のリフォーム費用を捻出できず困っています。

 

あと3ヵ月以上入院した場合、『病院に預けているから』との理由で障害児の手当をもらうことができません。入院中でも、私がつきっきりのこともあるのに……」(Aさん)

 

「脳性麻痺児は住んでいる県外の病院で処置を受けることも多く、紹介状の費用や交通費も必要になります。福祉車両をお持ちの家庭もありますが、私は運転できないので介護用タクシーを利用することもしばしば。あと今年、子供が2回手術しました。療育費用も宿泊費用も、手術代も一気にかさんで苦しかったですね」(Sさん)

 

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出典元:

WEB女性自身

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