作家・江上剛語る「日本の生産性の低さは労働者ではなく、大企業の経営者のせいだ」
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■思考停止した大企業の経営陣

 

そういう企業では「次は誰の番か?」というのが最大の関心事となる。役員に出世しても、真っ先に考えるのは、いかに“失点”を少なくして、社長への階段を昇るかだ。

 

「大学閥なんかがいまだに厳然と存在している会社もあったりするから、当然、同じような価値観の人間しか集まらないし、それから外れると出世できないですよね。そうすれば、そこに集まる人たちの考え方は均一化していき、一風変わった面白い意見があっても、それは『異端』として排除されてしまう。そんなことの繰り返しで、その組織の中枢が『思考停止』してしまう」

 

経歴も思考も均一化された経営者が会社を順番に経営していくなら、イノベーションが生まれる余地などはない。そうした経営者が生産性を上げるために真っ先に取る策は、リストラを含む“コストカット”だ。なぜなら、失敗することがないからだ。

 

「日本の大企業の経営者は、リスクを取りません。自分の社長任期が“なにごともなく終わる”ことだけを念頭に一切、冒険しようとしない姿勢は、諸外国のビジネスパーソンから見れば“停滞”以外のなにものでもないでしょう。従業員の給与を削り、正規社員の数を減らして非正規雇用を増やすことを“経営改革”だと称しているのです」

 

日本の労働生産性がいっこうに向上しない原因を、個々の労働者の責任に帰するまえに、まずは大企業の経営陣にこそ厳しい目を向けなければいけないという。

 

「日本の経営者はよく、米国企業の社長に比べて給与が少ないなどといいますが、そんなことはありません。彼らは会社のお金でゴルフをし、高級ホテルに泊まり、会計は経費で済ませる。米国の企業などでは許されないことです。なんてことはない、社員に資産を生ませておいて、経営者は自分でそれを食いつぶしている。そのことにみな気づくべきです」

 

【プロフィール】

江上剛

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。広報部次長や築地支店長などを務めた。2002年に『非情銀行』(新潮社)で作家デビューし、2003年に50歳直前で退職し専業作家に。『隠蔽指令』(徳間書店)や「庶務行員 多加賀主水」シリーズ(徳間書店)など、多数の作品がドラマ化されている。最新刊は『創世の日・巨大財閥解体と総帥の決断』(朝日新聞出版)

出典元:

WEB女性自身

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