■腰椎が5本折れ、重機のツメで腎臓が損傷……
一体どのようにして助かったのか、ノズさんはこう続ける。
「自分の身体が細いのと下の土が柔らかったので、バケツの爪の間から身体が抜け、下の土に埋まって助かりました。『この場にいたらもう一度やられる』と思い、走って逃げようとしましたが、5メートルほどのところで倒れてしまいました。そのときは腰が痛すぎて唸るしか出来ず……。
そうしていると、事故を起こした重機のオペレーターが倒れている自分を見つけて、駆け寄ってきて発見されました。集まってきた人達にも話しかけられましたが、『あー!あー!』と叫ぶことしか出来ませんでした」
すぐに現場近くの国立病院に運ばれ、鎮静剤を打たれてから話せるようになり、付き添いの現場関係者にようやく事の顛末を伝えた。
「まさか皆、自分がバケツで掬われたとは思って無かったようで、顔を青ざめさせて『よく生きていたな』と言われました。
レントゲン撮ったところ、腰椎が5本折れているのと、バケツのツメが腎臓を引っ掛けたみたいで、出血していたそうです。最悪の場合、下半身不随と自分でおしっこが出来なくなるかも知れないから覚悟しておいて下さい、と医師には告げられました」
奇跡的に、その最悪の事態は免れることになる。
「腎臓は幸い出血も止まっていて、大事には至らないってことで何もせず終わりました。腰椎のほうは髄膜を少し押していましたが神経損傷などは無く、ただの骨折ということで、首から下腹部までのギブス処置で済みました。入院していたのも、ICUで9日間、一般病棟で5日間の合計14日間です。
退院したのは9月になって直ぐだったんですが、ギブスは1ヶ月半ほどしていたと思います。その後、脇下から下腹部までのコルセットを作って貰って、そのまま半年ほど、年内は休業させてもらいました。その間も会社の社長から『知り合いのところでガードマンの仕事頼んでやるから、ボチボチでええから仕事慣らしていこう』と言っていただいたので、ゆっくり復帰させていただきました」
■面倒くさくてもルールは守って
ある程度の休業期間も経て、同じ仕事に復帰したというノズさん。果たして、後遺症などはないのだろうか。
「後遺症に関しては、退院してから1年間ほどは尿意を感じてトイレに行っても、出しかたが解らない感じで出せないときがありましたが、今は普通に元通りです。 ただ、右足から発汗しなくなりました。冷や汗は出るんですが、夏場とか全身汗だくになって服がびしょ濡れになっていても、右足だけカラカラに乾いています。 後遺症はそれくらいですね」
決して重い後遺症はなく、今は五体満足だと語った。だからこそ今回のツイートを投稿したのだという。
「自分は事故の前と同じ様に、五体満足で現場復帰して以前と変わらず仕事しているので、今回のツイートを見て軽くリプライ送っただけなんですが……。皆さんから『生きてて良かった』と多く言っていただいて有難かったです。
今の工事現場では、ショベルカーなどの重機の可動範囲に作業員が入るのは厳しく制限されています。自分の様な事故が起こって、未然に防ぐ為に取られた処置だと思います。自分は運良く何とも無かったけど、十中八九死ぬ事故なので。面倒臭いルールが設けられていても、現場のルールは守って安全に作業して欲しいと思います」