児童手当拡充でも「親世代の手取り減少」「負担増なのに少子化止まらない」と専門家
画像を見る 【表解説】児童手当はどうなる?

 

■共働き家庭で年間1万4000円の負担増の可能性

 

児童手当拡充のための財源は、子供がいない世帯を含め、すべての世帯で負担することになる。

 

「政府は、少子化対策を進めるために年間3兆円の新たな財源を確保する方針でした。そのうち1兆円を、加入者1人当たりの社会保険料を500円程度、引き上げることで、まかなうという案が出ていました」(島澤さん)

 

ところが6月1日、首相官邸で開かれた「こども未来戦略会議」で、岸田首相は年間予算を3兆5000億円規模と、5000億円も拡大する方針を示した。

 

「歳出改革によって予算を生み出すことを目指すと考えられますが、削減できる歳出が見つからない場合、社会保険料に転化される可能性があります。1兆5000億円を社会保険料加入者の目安となる20歳以上の人口で割り、労使で折半すると、1人当たり月595円、年7140円の負担増になります。共働きの家庭ではその倍、月1190円、年1万4280円も負担が増すのです」(島澤さん)

 

■過去の現金給付は効果が薄かった

 

児童手当によって少子化に歯止めがかかればいいのだが……。

 

「政府は“異次元”の少子化対策と言っていますが、インパクトのあるものにはなりそうもありません」(島澤さん)

 

そもそも、過去にも政府は現金の給付による少子化対策は行ってきた。1994年にエンゼルプランを開始し、その後、子ども手当なども行われたが、出生数、出生率ともに右肩下がり。2022年には、ついに出生数が80万人を割ってしまった。

 

「これまでの現金を給付する政策は効果が薄かったにもかかわらず、経済財政諮問会議の資料によれば、出生数を1人増やすために1億円から2億円もの税金が使われる予定です。非常にコスパが悪い。子供1人にかかる子育て費用は3000万円といわれています。

 

第1子に1000万円相当の支援をして子供を持つハードルを下げたり、経済対策によって若い人の手取りを増やしたり、賃金が上がらず手取りが増えない元凶となっている社会保障などの抜本的な改革などが求められているのではないでしょうか」(島澤さん)

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