「福島第一原発1号機の圧力容器が、地震で落下・倒壊する可能性があります。そうなれば大量の放射性物質が飛散し、周辺地域の方々は避難する事態になりかねません」
そう懸念を示すのは、原子力資料情報室で原発事故問題の究明に取り組んでいる上澤千尋さん。
じつは、福島原発事故でメルトダウンした1号機で、原子炉の圧力容器を支える“ペデスタル”という鉄筋コンクリート製の円筒形の土台(直径約6メートル、厚さ約1.2メートル)が、大幅に損傷し、鉄筋が露出していることが、今年3月の東京電力による水中カメラでの内部調査で明らかになった。今後、原子炉が地震に耐えうるかどうかが問題になっている。
これに対し、4月、東電は特定原子力施設監視・評価検討会で次のように簡易な見解を示した。
〈1号機の圧力容器の周りには“周辺構造部材(支え)”があるため、900ガル(震度7以上)の揺れでも倒壊する恐れはない〉
しかし、5月24日に開かれた原子力規制委員会では、委員たちから、「(東電の評価は)非常に楽観的。大丈夫とは言えない」といった厳しい意見が相次いだ。
「東電は、〈’22年3月に福島沖で起きたマグニチュード7.4の地震などにも耐えたから〉というだけで、こうした評価を出しているんです。つまり、“臆測”にすぎません」(前出・上澤さん)
要するに、次に起きる地震に耐えられる保証は一切ないのだ。
元三菱重工の技術者で、伊方原発3号機の建設機器班長を務めた森重晴雄さんも東電の評価は次のような“噓”があると指摘する。
「東電は、〈“周辺構造部材”があるから圧力容器が倒壊することはない〉と言っていますが、周辺構造部材は、作業員が定期点検などに使用する足場にすぎず、重さ440トンもの圧力容器が寄り掛かれば外側の格納容器を突き破り、放射性物質が放出されてしまいます」