■“弾丸登山”をする人ほど装備が不十分…担当者がSNSで危険性を訴えた理由
夏とはいえ、軽装備で富士山を登るのはリスクが高いとされる。そこで本誌は、Xで注意喚起した富士箱根伊豆国立公園管理事務所・富士五湖管理官事務所の担当者に話を聞いた(以下、カッコ内は担当者)。
「当時、気温はそこまで低くありませんでしたが、雨が降ったり止んだりと天気が崩れやすくなっていました。登山バスの上り下りの最終時刻が午後6時半くらいなので、登山してきて最終バスに間に合わない方は下りる術がなくなってしまいます。いっぽう、その時刻に上がってくる方は“弾丸登山”をされる方が多いので、あえて様子を見に五合目を訪れました」
“弾丸登山”とは夜間に五合目を出発し、山小屋に宿泊せず一気に富士山登頂を目指すことを指す。担当者が訪れた時は連休前で比較的登山者は少なかったが、そのなかでも外国人観光客の比率が高かったという。
「外国人観光客の方は旅行の予定も限られており、日にちをずらすこともなかなか難しいようです。天気情報なども日本人に比べて不足しがちで、悪天候の日はどうしても外国人観光客の比率が高くなってしまいます。
私がSNSに投稿した写真はたまたま日本人観光客だったのですが、あのような服装の登山者が次から次へと夕方に富士山を登ろうとしていたんです。そのような状況に危険性を感じて、SNSに投稿しました。私たちは“弾丸登山”を推奨しておりませんが、絶対的に禁止するということはできません。せめて注意喚起をして、危険であることを理解してもらおうと務めています」
また“弾丸登山”で午後6時半から富士山に登り始めるのは、時間的に「早い」とのこと。そのため、さらに危険性が高まってしまうという。
「登山者によって歩く速度は様々ですが、五合目を出発して6~7時間で山頂に着くというのが標準的なペースです。午後6時半に出発するとなれば、山頂に到着するのは深夜12時過ぎの計算になります。現在の日の出時刻は午前5時くらいですので、4~5時間ほど待たないといけなくなります。当然、上に行けば行くほど寒くなるので、寒い中何時間も待たないといけなくなってしまうのです」